山本陽子遺稿詩集 山本陽子

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 1986年に発行された山本陽子(1943~1984)の遺稿詩集。編集は坂井信夫と中村文昭。発行所は坂井方。

 

・目次

  • 詩篇'66~69
  •  よき、の、し
  •  視られた、もの、うた
  •  「し」と間隙
  •  原覚 Ⅰ
  •  原覚 Ⅱ
  •  よき、の、し Ⅱ
  • 遺稿

・別冊目次

  • 神の孔は深淵の穴 山本陽子
  • 陽子へ 山本昌
  • 悼句 池田栄子
  • 海と胎生 菅谷規矩雄
  • 詩と死の内臓図鑑 中村文昭
  • 『あぽりあ』の時代 坂井信夫
  • インタビュー/母・昌枝さんに聞く
  • 『あかり、あかり』詩の基本構造 渡辺元彦

作品発表一覧
年譜
あとがき 中村文昭
編集おぼえがき 坂井信夫

 

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ペタルの魂 木島始詩集

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 1960年、飯塚書店から発行された木島始(1928~2004)の第3詩集。解説は大岡信(1931~2017)。

 

 木島始の詩はとっつき易いものではない。これは詩だけにとどまらず、彼の小説でも少年文学の創作でも、いや翻訳でさえも、そうだといえるかもしれない。
 この文章は木島始の新しい詩集『ペタルの魂』の解説なのだから、最初からこんな風に書くことは解説者失格のおそれなきにしもあらずである。ところが、実は彼の作品のそうした性格こそ、木島始という詩人の、決して派手にひと目に映ることのない、オリジナリティを形作っている重要な要素なのである。
 彼は最近ラングストン・ヒューズの『ジャズ』の翻訳を出した。ぼくは『現代詩』にこの本の紹介を含む一文を書いたが、その折この本を引用しながら、彼の翻訳が、いわゆる達意の名訳と称される訳文では省略されるにちがいないような細部をも、あまさず日本に移しかえているのを見て興味を感じた。論理的な厳密さを読み易さよりも重視する態度の、かなり明瞭なあらわれがそこにあると思われたからだ。同じようなことは、彼の詩にも明らかにみてとられる。詩人のタイプは、彼がある状態を表現しようとする場合言葉をどのようにその状態と噛み合わせるか、その噛み合わせ方、つまり彼のスタイルによって決るといっていいだろうが、木島始の場合、それはどんな風にあらわれているだろうか。
 たとえば彼は、愛が暗礁に乗りあげた状態を次のように表現する。

 ぼくらはいまやつきぬ悔恨を、脱出の海へとただよい逃げても、
 大地に足をふみつける岸辺はなかった。
 船酔いのままに呕吐を口からあびせかけ、しかも
 ぐったりもたれあって悪態をつきあうふたりであった。
 「愛」という船底は揺れにゆれ、肉欲がぐいとぼくをきみの胸に引き寄せる。
 きみは啜り泣く。海鳴りはまえぶれする嵐。しきりな稲妻。
 ぼくらは船窓から四つの眼をよせあって。うねる航路をながめやる。かすかな方向感。

 こうした表現は、男女の愛のもつれ、いざこざをその現場でとらえた直接の表現ではない。「『愛』という船底」といった比喩に典型的にあらわれているように、これは再構成さえれ、客観化された愛のもちれであり苦悩である。いわゆる「現代詩」は、たとえば右の例にみられるような、カッコ付きの「愛」、概念化され比喩化された「愛」、古典主義詩人や浪漫主義詩人の中にあった大文字の「愛」とは別の、個人的で直接的な、一回限りの愛、小文字の愛を表現することに熱中してきた……

 

大岡信「解説」より)

 

目次

I
恋歌―一九五〇年―
裸形の影絵

II
登攀
沼と蛇

III
わが詩劇のなかの小市民の愛の唄
わが登場人物たちの誦する身近の唄

IV
幻視の光栄(ライムライト)
衛生の唄
管理部門

V
ペタルの魂
ニホンザル・スキトオリメ

VI
最初の脱出
組曲「海の雪(マリーン・スノウ)」

 

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ユーモアの鎖国 石垣りん

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1973年、北洋社から発行された石垣りん(1920~2004)の第一散文集。

 

 私のわずかな散文の、どれが、いつ北洋社の櫛野義明さんにめぐり逢ったのでしょう。
 こんど一冊の本にして下さるというので、はじめて名刺をかわし、打ち合わせをかさねるたび
「アルナラ、ダセヨ」
「ヤダヨ」
 私は互いの会話を、餓鬼大将と餓鬼娘のそれにこっそり置き換えてみては、ひとり笑い出すこともありました。
 櫛野さんはガキ代償どころか、私よりずっと年若い好青年です。
 とても使えないと思います。などと言いながら、古いものをおずおず差し出すうれしさは複雑でした。
 これが世間の目に堪えるでしょうか。いまはただ案じられるばかりです。
(「あとがき」より)

 

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風が吹くと 吉野弘 詩画集

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1977年、サンリオから発行された吉野弘(1926~2014)と池田勝彦の詩画集。

 

 美しい絵のある詩集、コンパクトでハンディで、若い人たちに読んでもらえそうな一冊の詩集――そういう本をつくってみたいなとかねがね思っていましたが、池田勝彦さんのすてきな絵に助けられて、そのねがいが叶えられることになりました。嬉しいことです。
 私はこれまで、特に若い人のためということを念頭に置いて詩を書いたことはありません。読者はいつも自分自身でした。今でも、そうです。20歳のときは20歳の詩を書き、50歳の今は50歳の詩を書いています。もう若くはありません。しかし、私の年齢には随分、幅があって、10代半ぐらいからあとの年齢は全部、自分の年齢のような気が、いつもしているのです。(幼児の詩を読めれば幼児にもなれますから、実際は、もっと幅がありそうです。)言い換えれば、いくつになっても、青二才をひきずっているということです。
 そういう人間の書いたものなんだから、若い人たちにも、きっと読んでもらえる――そう自惚れて、このような本をつくる気になったのです。一篇でも二篇でも、好きになってもらえる作品があれば望外の喜びです。

(「あとがき」より) 

 

目次

1・天の目
天の目

二月の小舟
氷の壁で
早春のバスの中で
譲る
素直な疑問符

2・生命は
生命は
みずすまし
風が吹くと
魚を釣りながら思ったこと

歩く
船は魚になりたがる
小さな出来事
田・舟・雨

3・夕焼け
夕焼け
山が

熟れる一日
物理の夏
豹変
台風
秋の傷
忘れられて

4・冬の陽ざしの
運動会
石仏
立ち話
祝婚歌
エストを
冬の陽ざしの
冬の海
雪の日に

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春の画の館 金井美恵子詩集

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1973年、思潮社から発行された金井美恵子の第3詩集。挿画は姉の金井久美子。

 

残酷な童話

金井美恵子の詩集は、題名からも予想されるように、あるときある場所に建っている不思議な館の年代記風な骨組みに託して、性的主題を展開したものである。館のあるじは誰だか分からず、そこで飼われている少年少女は永遠に純潔で、しかも館ではサド・マゾ的な性と血と拷問の日々が続く。一篇の残酷な童話のおもむきがあるが、作者の緻密で正確な日本語は、語りの面白さとともに、この作者の才筆をあらためて証すものである。

大岡信朝日新聞

 

子宮が語るメルヘン

〈館〉というエロティックにうねる巨大な荒野と規律の空間――をなまなましく描き出した詩人の姉の金井久美子による挿画は、ベルメールやバイロスでさえ実感不可能な関大なる密度のたたずまいを示し直した、ように思われる。この世で最も残酷で甘やかなお伽噺。それはこの本のような子宮が語るメルヘンというものだろう。

加藤郁乎/読売新聞)

 

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日の底 菅原克己詩集

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1958年に飯塚書店から発行された菅原克己(1911~1988)の第二詩集。

……さて、菅原克己、詩稿を携えきたりて、僕に解説を求む、光栄なりといえど、その任にあらざるをいかんせん、まことに人生字を識るは憂患の始とかや、貪人眼前を思い富人来年を思うという、彼は眼前を語りて来年を思うの人なり、震雷聰を掩うに暇なしというが如きは彼の趣味にあらず、措辞簡明にして、読む者卒然として理解す、されど詩を語るは難いかな、あえて語らんか、ひそかに鬼の笑うところとならんのみ、僕は沈黙ス、朱門富むといえど貧しきにしかざるなり。
 菅原克己は今日も、カバンをぶらさげて、サークルに出没している。
 都会の中に砂漠あり…
長谷川四郎「解説」より)


目次

夕暮れの詩二つ

この明るさのなかで
日の楔
階段の上の部屋で

サークル圈

ぼくらにある住家
やさしい友だち
小さい歯
ブラザー軒
光褝寺通りのめくらの叔母さん
日曜日のシンデレラ
二つの穴
原子の出発
詩は百万の友のなかに
ぼくはひとり ぼくらは全部
あたらしい時に

ぼくらの年代から

飢え
1 新聞記事
2 夏帽子
3 「そびえるマスト」
4 二人
5 家
6 来訪者
7 椅子
8 やさしい日々
9 写真
練馬南町一丁目

饑餓時代

1 空気の部屋
2 金網
3 買出し列車
クリスマス・イヴの夜更け
日について

日の底

日の底

解説 長谷川四郎

 

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