1983年1月、私家版として福原晃により刊行された福原清の遺稿詩集。
父福原清は、昭和五十七年二月三日午後七時四十五分、自宅で心不全のために死去いたしました。風邪気味で臥っており、床で夕食をすませたあと、家人も気づかぬうちの安楽な最期でした。
思えば、父は無欲・潔癖で社交を好まず、ひたすら詩と骨董とを愛した、ある意味では幸福な八十一歳一か月の生涯でした。死の四年ほど前、若いころからの盟友であった竹中郁さんにすすめられ、最後の詩集を出す準備を進めておりました。既刊五詩集の作品を検討し、手を加えておりましたが、それを果たさなかったことが唯一の心残りであったろうと察しられます。
それでここに『福原清詩集』一冊を編み、一周忌に霊前に供え、旧知の各位の御覧に入れることとしました。詩集『不思議な影像』『月の出』『ボヘミヤ歌』『春の星』の四冊については父が選び出しました作品のみを集めて「抄」とし、手を加えたところを生かしました。第五詩集『催眠歌』は吟味が終わっておりませんでしたので、そのまま収録しました。
(「あとがき」より)
目次
「催眠歌」
〈をりをりの歌>
- しゃぼん玉吹く
- 遅日
- 残春唱
- 花片
- 春風
- ことのね
- 春のあは雪
- 断章
- 旅中吟
- アカシヤ並木
- 庭前落葉
- 琴
- 十年
- わが庭の晩秋の歌
- 晩夏小情
- 夏のゆふべの歌
- 水たま
- 宵の歌
- 夏立つ五月
- 窓にて
- 日暮小景
- 車窓
- 雪残る町
- Après l'eté
- 夏の日に
〈草上喫煙>
- 春
- 海村四季
- 噴井
- 霜月
- 窓に倚りて
- 秋の日向
- 短唱
- しぐれ
- 昔の町
- 雨はれ唄
- 日なが
- 春のガラス絵
- 豊旗雲
- 群鳥
- 薄陽
- 池畔
- 草の上
「春の星」抄
- 夜へ
- 夜
- 今日の夏
- 想ひ
- 駅路
- 運河の晩
- 時雨と匂ひ
- 堀割
- 高台の晩
- 翌朝
- 窓
- ひと日の春
「ボヘミヤ歌」抄
- 風が光る 薔薇が揺れる
- 曹達水
- 水禽
- 心の風景
- 小児科病院の夕暮
- フクシヤの点景。
- Souvenir
- 秋風よ
- 偶成
- メニューの上に
- 孤寂
- 冬近く
- 歌
- 不言教
- 紫陽花
- 燕に
- 若い夫人に
- 閲歴
- 悲哀
- 雨外套の鳴る音
- 冬の雲
- 裏町をあるく
- 女のみない部屋
- 寒い
- 燕
- この女
「月の出」抄
- 序言 萩原朔太郎
- 疲れてゐる
- 悲哀の羽ばたき
- 影のごとき処女
- 田舎暮景
- 雲
- 海鷗
- 浪を超えて
- 貧しき漁夫
- 帰帆
- 記憶に逼つてゐる
- 高架橋から
- 失明の馬
- 田舎の冬に
- 子供
- 雲に指さして
- 迷霧
- 沖の浪間に
- 真昼の夢
- 帆影
- 夏雲
- 塩谷村の秋
- 風見の鶏
- ふざけた唄
- 沙上吟
- 秋風吹いて
- 時雨
「不思議な映像」抄
- 日の涯に
- さみしい緑
- 雪ふる
- 雪やむ
- 旅
- 春を病む処女
- ある夕暮
福原清の詩について 足立巻一
福原清略年譜
あとがき 福原晃