1953年6月、創元社から刊行された小野十三郎(1903~1996)の詩集。表紙は中村真。写真は河野徹。
私がこの詩集の第一部をなす作品を、最初に同じく「大阪」という題の下にまとめ世に問うたのは、いまから十四年昔、昭和十四年である。私にとってはいろいろ想い出のある詩集だ。第二部は、それから四年後、昭和十八年に出した「風景詩抄」が骨子になっている。これは続「大阪」とも云ってよい。以上を戦争前の大阪だとすれば、第三部は大体戦後の大阪で、昭和二十二年に相前後して出した二つの詩集「大海辺」と「抒情詩集」から、この本の構想に適わしい作品をピックアップし、それに若干の未発表の作品を加えた。このようなかたちで、詩集「大阪」を完成さすことは、私の多年の念願であったが、い大阪創元社の賛同を得て、今日これを実現させることができた。
(「あとがき」より)
目次
・第一部(一九三六~一九三九)
- 白い炎
- 早春
- 明日
- 北海岸線
- 骸炭山(一)
- 骸炭山(二)
- 焚火
- 戸籍
- 古い春
- 貨物列車
- 雀
- 冬の夜の詩
- 一日
- 雨季
- 動物園
- 城
- 小事件
- 赤外線風景
- 舗道
- 帰り旅
- 泉北平野
- 五月のある夕暮に
- 或る夏の真昼の歌
- 初秋の詩
- 梅
- 十年
- 葦の地方
- 初夏の安治川
- 交替
- 猪飼野
- 電気広告塔
- 晩春賦
- 住吉川
・第二部(一九三九~一九四一)
- 大葦原の歌
- 風景(一)
- 完全な日常について
- 夏の葦
- 花園
- 風景(一)
- 風景(二)
- 風景(三)
- 風景(四)
- 風景(五)
- 硫酸の甍
- 大河口
- 人造石油工場一つ
- 重工業抄
- 北斎の葦原
- 風景(六)
- 黄昏の地平
- 風景(七)
- 島影
- 住居
- 日紡の近所
- 風景(八)
- 風景(九)
- 葦原拾遺
- 収容
- 詩人の投資
- 葦の地方(一)
- 未知の世界
- 私の人工楽園
- 自然嫌い
- 浮游生物死滅
- 葦の地方(二)
- 葦の地方(三)
- 葦の地方(四)
- 工業
- 鉄柱枯野を横行す
- 海辺
・第三部(一九四一~一九五二)
- 大海辺
- 雀の宿
- 葦のなかの小さな水たまり
- 夢幻集
- 紫の花
- 廃墟
- 鶴
- 物質の原にて
- 不当に「物」が否定されたとき
- 世界の第四百六十五位の工場地帯で
- 放棄の歌
- 窓から
- 志留利亜
- 夜の葦
- 植木棚
- 近づく
- かもめ
- 壊滅
- 夕暮の川に沿うて
- 地下の夜
- 小鳥たちの風景の記憶について
- みち
- 雀の木
- 影絵の庭
- 林檎
- 九つの地下の停車場に
- デルタ公園で
- 大阪どまり
- 浪曲記
- 夜の海へ
- 夜の雲
あとがき