銀行員の詩集 1952年版

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 1952年5月、全国銀行従業員組合連合会文化部から刊行されたアンソロジー。選者は野間宏と伊藤信吉。装幀は、日本興業銀行美術サークル、大阪銀行従組東日本支部美術サークル。
 石垣りん作品は、「祖国」が「1.ふるさとの四季に歌う」に、「私の前にある鍋とお釜と燃ゆる火と」が「3.まずしい生活に耐えて」に、「今日もひとりのひとりの」が「5.きびしい世相に抗して」に、「雪崩のとき」が「6.平和よ、戦争に負けるな」に収録されている。千早耿一郎作品は、「夕やけにうたつた歌」が「2.心美しく生きるために」に、「おむつの歌」が「5.きびしい世相に抗して」に、「夏の花」が「6.平和よ、戦争に負けるな」に収録されている。

 

 一九五一版「銀行員の詩集」の発刊が足場になつて、われわれの職場、サークルにおける詩の運動は、量的にも質的にも高められてきた。その一年間の成果として編集されたのがこの詩集である。
 応募詩五一四篇の中から選ばれた一三〇篇の詩は(集録率二五パーセント。昨年度は九、五パーセント)一篇一篇が銀行員としての体臭をにおわせて、嵐のあとの花のように咲きほこっている。いや、それは嵐を前にした花の健気な微笑であり、不敵なほほえみであるのかも知れない。
 この詩集が昨年度のそれとくらべて特徴的な点は、自己の内面を歌つた詩が少くなつたこと、それに反して職場に取材した詩が多くなつたことである。さらにあげるならば、戦争前夜のような暗い世相の中で、知識労働者としてのギリギリの抵抗精神が華麗なまでにもやされていることである。現代に生きるもののひとしく求めている善意と良心の灯、愛と自由の歌、たやすまい、たやすまい、そう念じて歌いあげた清く美しい声、声、声よ、平和を愛するすべての人々の胸の中にとびこんでゆけ、とこの詩集はよびかけている。
 この詩集が、われわれの文化活動の糧として、あるいは支柱として、十二万銀行従業員のすべての人によまれ愛されることを切にのぞみながら、お手許にお送りするものです。
(「はじめに」より)

 


目次

  • 1.ふるさとの四季に歌う
  • 2.心美しく生きるために
  • 3.まずしい生活に耐えて
  • 4.わたしたちの職場
  • 5.きびしい世相に抗して
  • 6.平和よ、戦争に負けるな
  • 7.愛と自由の灯をともそう

選をめぐつて 伊藤信吉
選後に 野間宏


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