1966年3月、東京出版センターから刊行された菅原克己(1911~1988)の第3詩集。刊行時の住所は東京都調布市。
この詩集は、前詩集『日の底』以後現在にいたる作品のなかから、約三分の一ほどを収録したものである。これでぼくの三冊目の詩集ができ上ったわけだが、まったく遅々たる歩みとしか言えないものがある。しかし、いまさら言いわけしてもはじまらない。詩人はひそかに、その生涯をかけて一大長篇詩を書くような気概をもつより仕方がないものなのだ。マクシム、ひたすら前進せよ、である。
読みかえしてみると、ぼくの作品には抒情詩が多いが、結局、愛と生と死という昔ながらの目標につきあたるようだ。政治と文学の問題も苦渋をふくんでのこされるが、イデオロギーはぼくのささえであり、そこのところでつねに最初の人間の出発を考えることが、ぼくにとっては<地下水のように>必要だったと言えよう。
詩作品とは目標、情熱、方法の三位一体であり、どれが不足してもなり立ち得ないと思うが、はたしてそれらがこの詩集に鳴りひびいて、感銘ふかいものにしたかどうかは、読者の判断に待つより仕方がないだろう。
昨年の暮れ、偶然街で旧友山田静郎君に出会った。彼はその時、ぼくの胸を叩くように、気軽に詩集刊行のことをもちかけてくれたのである。ぼくは山田君とその社の人たちにあつくお礼を言いたい。これもまた詩のようにぼくの心にのこった大切なものである。
(「あとがき」より)
目次
- 童話の仲間
- 1やさしい言葉
- 2眠り男
- 3童話の仲間
- 帰宅
- 金髪のなかの銀髪
- 住家
- 娘
- やきとり・蛮屋
- 胃袋の上の方が涼しい
- 1胃袋の上の方が涼しい
- 2七面鳥のように
- 3ぼくは君を見つつ
- 啞とめくら
- 今年の夏
- 1マリはこう言った
- 2彼にとって
- 3やさしいプロ派
- 4飼犬ダリ
- 5自慢話
- 陽の扉
- 月の終りの三日間
- ハバナに行った人
- 1あなたは誰だ
- 2西部劇異聞
- 3ふたたびダリに
- 4同じく朝早く
- 5最初のもの
- 6ハバナに行った人
- 手紙の名人
- むかしの人
- ベトナムの返事
- 聖バレンタインの日の夕べ
- 死の囚人
- セピア色の肖像
あとがき
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