1993年6月、ふらんす堂から刊行された金井雄二(1959~)の第1詩集。装幀は渡部俊慧。付録栞は清水昶「幸福への質問――金井雄二について」。刊行時の著者の住所は相模原市。
作家の故阿部昭氏が「書くということ」という掌篇の中で、つぎのように述べている。
「書くということが問われるたびに、いつも見落されがちなのは、端的に小説なら小説を書くよろこび、あるいは単純に文章を書きたくなる気分、といったものである。」
このエッセイを、わたしは小説作法とはみずに、文字であらわす表現すべてに関わる文章だと思っている。
わたしは今まで「書く」という行為すべてにおいて、この気分を大切にしてきた。そしてこのたび第一詩集を発行することとなった。ほぼ全篇において、わたしのからだのなかから滲み出てきた、懐かしい人たちへ、四季を通じて送った詩である。巧拙はともかく、書くということをおろそかにしなかった、というのがわたしの最後の自負であることを銘記しておく。
集中、「草叢のなかで」がGEL15号に掲載されたほかは、同人誌「浮遊」「現代詩研究88」個人誌「独合点」「詩学」研究作品欄に初出されたものである。また、作品の一部を書き直したものがあることも付け加えておく。
みじかの、先輩友人の諸兄、栞を書いてくださった清水さん、装丁の渡部俊慧さん、みなさんのおかげでこの詩集は世にでることができた。
(「あとがき」より)
目次
- 五月
- 象―(ゾウ、あるいは懐かしい幻影たち)
- 妹
- 人間の回復
- ひととき
- 草叢のなかで
- 熟睡までの彼のおはなし
- そこに、舞ったような一本の髪の毛があった
- よく似た男
- 枯木のある風景
- <<断編>>牛の首の話
- 道、その他の断章
- 冬の陽につつまれて
- 枯芝
- 動きはじめた小さな窓から
- はるのひかり
あとがき