1928年1月、學藝社から刊行された宮地嘉六(1884~1958)の評論集。
小説の作り方と云ふやうな本はこれまで数種世に出てゐるが、本書は私の純粋の経験談である。聊か他の書と異つた暗示を作家志望の青年諸君に與へ得るだらうと思つて、本屋の依頼に感じて書いて見たのである。理論的にむづかしく書いてあるのはいくらもあるやうだが、これまで世に出て此の種の本では、徳田秋聲氏著の『小説の作り方」が最もくはしく指導的に書かれてゐる。然し私は私で、私の思つてゐることを書いた。いくらかでも青年諸君のためになれば満足である。
(「序」より)
目次
作家志望の人々へ
- 私は全く獨學でやつて来た――努力と執着力――文學は私にとつては人であり救ひの恩人であった――最後まで押し通したと――
小説家たるには如何なる修養を要するか
- 人の進歩には三期の段階がある――經驗、見聞その他――小説家は人生の批評家である――すべてに注意深きこと――主觀の鏡を磨け――自己省察――
小説には師を要するか
- 尾崎紅葉の言葉――小説家には師を要せず――獨自性を發揮すべし――幾千の書悉く師である――先輩の言に拘泥してはならぬ――
小説家たることは果して難事か
- 人生に難事でないものばない――慢心することは最も自己を過る――自分で自分の缺陷を知るに努むる――自意識を強めよ――苦悩を糧として精心を錬へ――自惚の原稿を先輩や雑誌社に持廻るな――創作力の修養は讀書、體驗、日記を忠實に書くこと――毛嫌びせずに諸作家の小説を読むこと――經驗は想像力を自在にする――批評的精神を高めること
如何にすれば小説は書けるか
- 堅き意志を以つて――小説を書く時草稿をよぎなくする場合――感興へ思想の行詰る時が必ず来る――生活費の必要に迫られて書く――時に大膽なれ――如何なる場合にもヒントは得られる――小旅行や散歩も必要――あまりペンが辷るのはよくない――低級な讀物作者になる人
小説を書く場合の態度
- 態度は重要である――自序傳小説を書く場合――慢心は態度上の缺陷を来たす――態度、精神の持ち方――自己を偽るな――
いよいよペンを取って書きだすまで - 題材を定めるまで――構想や表現に凝り過ぎると不可ない――書けない時の憂鬱――書けない時は筋だけでも書く――草稿で自信を作る――
小説の書き出しについて
- 第二義的な雑誌編輯者の言葉――書き出しに凝るのは初心――終になる程引しめる――龍頭蛇尾に醜態――
作家と見聞
- 長篇を書く時に見聞の狭きを嘆ず――他人の話に傾聴感動すること――國木田獨歩の言――小説家は畫家的素養を要す――
短篇
- 「温泉場スケッチ』(見聞を主とした小説の参考として)
- 『十一二の頃』(自序傳小説の参考として)
- 『女理髪師』(空想小説の参考として)
創作問答
小説の會話について
- 佛蘭西現代女流作家ディ夫人の對話小説としての名篇『たはむれ』
諸家の文章
自然描寫について
- ゾラ――ゴルキー――シュミット・ボーン――
創作問答補添
附錄
- 連作小説について
- 藝術の本質
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