囚衣 山田清三郎歌集

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 1939年7月、文泉閣から刊行された山田清三郎(1896~1987)の第1歌集。

 

 私は、獨房に生活してみた時ほど、自分が內面的に純粋であつたことはないやうな氣がする。私は今大陸の旅を志して新京に來てゐるが、この大陸の旅で、私はそのことを今更らのやうに回想させられてゐるのである。
 東京を出發する前に、高橋喜惣勝君から是非私の獄中歌を一冊にまとめるやうにとの話であり、寧ろよんどころなく承諾したかたちであつたが、かうして大陸に來てみると、今度は心から歌集が出したくなつた。前からそのことを勧めてくれた畏友渡邊順三並にわが親愛なる高橋君に遙かに感謝の意を表したいと思ふ。

われ獄に若し死すあらば
歌こそは遺言ならめと
けふも思へり

 私は獄にゐてこんな歌を詠んだことがあつた。豈獄のみならんやである。私は、両三日中に北満の國境地帯に向ひ、移民團や鐵道自警村の中で半年位は暮してみるつもりである。その間に現地でこの歌集を手にすることが出来たらどんなに嬉しいことだらうと思つてゐる。
(「自序」より) 

 

目次

自序

  • 豊多摩集
  • 市ヶ谷集
  • 千葉集

あとがき 高橋喜惣勝


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