2004年5月、短歌新聞社から刊行された岩崎芳秋による石川信夫(信雄)研究書。
この度「石川信夫研究」を刊行することになりました。
石川信夫が、五十六歳で他界されて四十年にもなろうとしています。私は昭和三十八年二月に師事しましたが、その期間は僅か一年半に過ぎませんでした。だが、この短い期間は私の人生で最も充実したものです。私は短歌にすっかりのめり込んでいたのです。没後、思慕止み難く、宇宙風誌に百十三回に亘って「石川信夫研究」を書きました。今回は加除訂正し、彼の幼年期から年次順に書きました。
(「あとがき」より)
歌集『シネマ』によって開花し、『太白光』にいたってついに豊饒な結実を見た石川信夫の短歌は、重厚、絢爛、妖艶な詠法を駆使し、近代短歌史上に特異な金字塔をうち立てたことは、歌壇の内外を問わず、高く評価されるところである。
我々は、すでに彼の作品を通して、信夫の天才的詩的感懐を疑うことが出来ないし、その特性と生き態は、多くの歌人の模倣と追従を許さない資質を保持したことによることも知っている。石川信夫研究をするに当って、先ず初めに彼の作歌土壌となった風土をさぐり、併せて人間信夫の萌芽期を見つめ、その揺籃期における作品と作者に迫り、やがて再度中国大陸に渡り、陸軍報道部員として活躍する壮年期を経て、終盤を飾るまでの曲折するプロセスを追って論評と解明を試みることにする。
(「序」より)
目次
序
第一章 系譜と揺籃期
- 一、処女作品を追って
- 二、共励会と作品
第二章 歌集『シネマ』について
- 一、エピロオグ
- 二、作品の解析
- 三、歌集『シネマ』批評
- 四、『シネマ』出版記念会
第三章 歌論を探る
- 一、写生派の猿を評す
第四章 中支派遣
- 一、大陸での文化活動
第五章 復員『太白光』刊行へ
- 一、豊岡にて
- 二、 『太白光』刊行と復刻版
- (一)、太白光をめぐつての思ひ出 草野心平
- (二)、幻の歌集『太白光』の再現 加藤克巳
- (三)、各紙に掲載された歌評
- (四)、あとがき
第六章 原罪の歌人 石川信夫の晩年
- 一、『太白光』以後と「宇宙風」誌発刊
- 二、石神井に越される前後
第七章 石川信夫主宰天界へ逝く
- 一、青天の霹靂
- 二、失意と紛糾の中で
第八章 追憶
- 一、石川信夫とアルコホル
- 二、生涯の独身
- 三、入門のころ
- 四、石川信夫の鉄槌
- 五、偲師抄
あとがき
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