2014年5月、思潮社から刊行された根本明(1947~)の第8詩集。装画は岩佐なを。著者は宮崎県生まれ、刊行時の住所は千葉市稲毛区。
毎月、地域の詩の集まりをもつ埋立地の建物からは、黄金色に輝く日没の海を臨む。ポートタワーやキリンクレーンが光に融けるようによじれ立ち、製鉄所の黒い影が凹凸する。小野十三郎が「葦の地方」などの詩篇によって見はるかした、工場地帯という「物の風景」に逃れきれず捉われてきた。この詩集においてさらに呪縛されてある思いがする。しかし、苛烈に現前してあった物たちは老い、綻び、なおかつやってくるものの予感に震えている。私は小野の見た風景の終焉を見つつあるのだろう。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 潮干のつと
- わざ歌
- 海神のいます処
- 黒砂を月がのぼって
- いまむかし、いまやむかし
- たわぶれの谷津
- 遡上
Ⅱ
- 寂しい遊具
- 七ヶ浜
- プラトー
- 加曽利の崖で
- 晩夏
Ⅲ
- くずし字、それは海だ
- 銀座の朔太郎さん
- 幕張
- 三月、海降る千葉マリン
- チバ・シティ
- 薄明に
- 白金を浴びて港を
- 浄土の鳥
- 鏡の塔の先端で
- 劇
- 仮名かな
- 差し出されるもの
- 光の滝
あとがき