1968年7月、アポロン社から刊行された野上彰(1909~1967)の詩集。装画は山本蘭村、撮影は齋藤襄治。別冊「詩人野上彰の思い出」。
目次
・前奏曲
序 川端康成
- 1 わたしの心にある三つのものよ
- 2 忘却の時にあって
- 3 雨は降る
- 4 冬の夜ふけ 影法師ひとりを守って
- 5 ぼくは思い出すにちがいない
- 6 わたしは帰って行くであろう
- 7 ぼくは朝早くから林に落ちた栗の実を拾い
- 8 南風は立葵の色彩をかきみだし
- 9 なにをぼくは待っているのだろうか
- 10 ぼくは火山の頂きに立って
- 11 みそさざいがぼくの心に巣をつくり
- 12 ぼくの手をあなたの膝にあずけて
- 13 ぼくの生活が暗くなってしまった日に
- 14 太陽が火山の頂きに沈んだときから
- 15 啄木があなたの胸のなかをのぞきこむ
- 16 虻は飛ぶ 金色に
- 17 火山の嵐に吹かれ ぼくは枯野の頂きにあった
- 18 水芹が羽黒鶺鴒の翼の下に明るく
- 19 ぼくは耳を澄ます
- 20 ぼくは峠を越えて 林檎の村に降りて行こう
- 21 歴史がぼくに持ってきた小さな花束をあなたにあげよう
- 22 ぼくはあなたを見失う
- 23 あなたの瞳のなかに世界が消えてしまうとき
- 24 ぼくは出発しよう
・幼き歌
- 序・中島健蔵
- 1 恋人よ おまえの掌を胸に支えて
- 2 恋人よ いまは午後の刻
- 3 恋人よ 僕のことばが
- 4 恋人よ 椎の葉を震わせる夜明けの風が
- 5 恋人よ 僕たちの寝床に
- 6 夢が帰ってくる
- 7 それがそよぎであることを
- 8 恋人よ 午後の庭 明るい日向に鞦韆が僕たちを招いている
- 9 恋人よ 午後の林の卓上に えにしだの花があなたと僕の空間に燃えている
- 10 恋人よ あなたの胸の草原に
- 11 恋人よ あなたが僕の名を呼ぶとき
- 12 恋人よ あなたの壁に落す僕の影法師の暗さにおどろかないで
- 13 飛びながら啼く郭公のように
- 14 恋人よ あなたの茨に傷つけられた足からしたたる血を
- 15 恋人よ 日が沈むときに吹く風のように
- 16 恋人よ あなたが考えているとき
- 17 恋人よ おまえの眼が乾いているときも
野上彰の人と作品・草野心平
かいせつ・磯村英樹
野上彰年譜