2001年5月、大修館書店から刊行された「青鞜」に関わった人物事典。編著はらいてう研究会。
私たちの研究会は、一九九六年『「青鞜」の五〇人』という冊子を自費出版しました。幸いこの『五〇人』は好評で、宣伝したわけでもないのに全国の多くの方からご注文をいただきました。お読みになったたくさんの方から励ましの言葉をいただきましたが、なかには貴重な苦言を呈して下さった方もいらっしゃいました。私たちの研究会は専門家の集団というわけではなく、仕事を持つ者も、主婦も、また他分野の研究者もいます。そのため内容的に不十分だったり、また著名な人の先行研究の読み込みが足りなかったり、全体的に不統一だったりと未熟な点の多々ある冊子でした。しかし私たちは読者からの反響を読んだり聞いたりするなかで、今度はもう少しきちんと、それも「五〇人」ではなく「一○○人」にしたいと話し合ってきました。そして五年、何とか形にすることができたのがこの本です。会員の条件は変わっていませんし、内容的にもまだまだ未熟です。しかし会員一人ひとりが実に熱心に対象に迫って調べる、遺族を捜しだし聞き取りにでかけるといった努力によって、いままで全く手懸りさえもないのではと思われた人の生涯が少しでもわかってきたときのみんなの喜び。ささいな情報でもあれば交換しあい励ましあう、こうした集団研究の結果としてできたのがこの本です。
平塚らいてうの生涯の活動のなかでも『青鞜』は一番よく知られており研究も進んでいますが、その『青鞜』でさえそこに関わった人びとは一部の著名な人を除いてあまり知られていませんでした。堀場清子氏は「青鞜の時代』で「青鞜参加者名簿」をつくり社員と見なされる人に社員番号を付しており、その番号は八七号まで数えられています。『青鞜』には社員名簿が残されておらず、『青鞜』各号に入社記録は記載されていますが、すべてを網羅しているわけではなく、しかも固有名詞でありながら誤植が多いのです。また、改姓、改名、筆名などもあります。また『青鞜』は途中で組織替えをしており、補助団員、甲種会員、乙種会員、といった区別も設けられています。そして何よりも創刊時に「女流文壇の大家」として賛助員に名を連ねた与謝野晶子ら七人は、その社員番号から除かれています。また社員として登録されてはいないが、寄稿している人もいます。こうした人を数えると「ざっと一五〇人ほど」と『五〇人』のなかで書きました。しかし今回ミニ評伝を載せることができた八八人、そして「Ⅲ資料」に付した一二〇人を加えると、約二○○人の女性が『青鞜』に関わっていたと推測することができます。
私たちは『五〇人』を踏襲したうえで社員と限定することなく、『青鞜』にかかわった女性たちをできるだけ多くというのが当初の目標でした。しかし話し合いを重ねるうちに、女性だけでは不十分という結論になりました。それは手懸りのある女性が少ないということだけでなく、『青鞜』を考えるとき女性だけでいいのかという本質にかかわることでした。もちろん『青鞜』は「女性による女性のための雑誌」としてつくられたことは周知の事実です。しかし『青鞜』の周辺には幾多の男性たちがおり、その人びとの影響と支援を抜きに『青鞜』を考えることはできません。また社員たちに多大な影響を与えたという点で、外国の思想家たちを忘れ去ることもできません。ということで、『青鞜』の女性たち八八人をメインとしながらも、本書では男性および外国人をも限られた人数ながら収録し、『青鞜の一一〇人』となりました。本書がきっかけとなって、今後『青鞜』の女性たちに関する情報がより多く掘り起こされることを期待しています。
(「あとがき/折井美耶子」より)
目次
Ⅰ『青鞜』――歴史の水脈となった人々
はじめに
おわりに
Ⅱ『青鞜』の一一〇人
- 青井禎子
- 青木穠子
- 青山菊栄
- 阿久根俊
- 荒木郁子
- 生田花世
- 石井光子
- 伊藤野枝
- 井上民
- 岩野清子
- 岩淵百合
- 上田君
- 上野葉子
- 江木栄子
- 大竹雅
- 大村かよ子
- 小笠原貞
- 岡田八千代
- 岡田ゆき
- 岡本かの子
- 尾島菊子
- 尾竹紅吉
- 片野珠
- 加藤籌子
- 加藤みどり
- 神近市子
- 川端千枝
- 神崎恒
- 蒲原房枝
- 木内錠
- 岸照子
- 木村政
- 国木田治子
- 小金井喜美子
- 小林哥津
- 五明倭文子
- 斎賀琴
- 佐久間時
- 四賀光子
- 柴田かよ
- 上代たの
- 杉本まさを
- 鈴村不二
- 瀬沼夏葉
- 世良田優子
- 高田真琴
- 竹井たかの
- 武市綾
- 武山英子
- 田沢操
- 龍野ともえ
- 田原祐
- 田村俊子
- 茅野雅子
- 千原代志
- 長沼智恵子
- 中野初
- 野上弥生子
- 長谷川時雨
- 林千歳
- 原阿佐緒
- 原田琴子
- 平塚らいてう
- 平松華
- 福田英子
- 堀保子
- 松井静代
- 松井須磨子
- 松村とし
- 三ヶ島葭子
- 水野仙子
- 水町京子
- 宮城房子
- 物集和子
- 物集芳子
- 望月麗
- 物河鈴子
- 森しげ
- 矢沢孝子
- 安田皐月
- 保持研
- 山田邦子
- 山田澄子
- 山田わか
- 山本龍
- 与謝野晶子
- 吉屋信子
- 若山喜志子
- 阿部次郎
- 生田春月
- 生田長江
- 岩野泡鳴
- 大杉栄
- 奥村博
- 小倉清三郎
- 辻潤
- 富本憲吉
- 西村陽吉
- 馬場孤蝶
- 森田草平
- 山田嘉吉
- イプセン
- ウォート
- エリス
- ケイ
- ゴールドマン
- シュライナー
- ショー
- ズーダーマン
- ニアリング
【コラム】
・青鞜社事務所
・青鞜社の二大スキャンダル
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・メイゾン鴻の巣
・翻訳劇の合評
・『青鞜』社員とある鈴木かほるは誰?
・『青鞜』史上唯一の男性社員?藤井夏
・らいてうと研が恋人に出会ったサナトリウム
・青鞜社第一回公開講演会
・水菓子屋「サツキ」
・『青鞜』掲載の広告
『青鞜』関係資料
用語解説
『青鞜』関係者の出生地
調査中の『青鞜』の人々
日本女子大学・学部系統図
『青鞜』の歌人系譜図
『青鞜』関係記念館等
個人別参考文献一覧
あとがき
索引
・執筆者一覧
- 飯村しのぶ
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- 池川玲子*
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- 村岡嘉子*
- 室ゆかり*
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- 山城屋せき
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