1955年6月、筑摩書房から刊行されたW・H・オーデン(1907~1973)「短詩集」の翻訳。翻訳者は深瀬基寛(1895~1966)。装幀は鈴木二朔。オーデン没年の1973年、せりか書房から復刊された。
すべての作家は各自の立場から見て、自分の過去の仕事がおのづから四つの部類に收まることになりはしないかと想像される。その一、それを思ひついたといふだけで、すでに後悔の種になるやうな純然たるもの。その二、これは作家にとってはいちばん痛いのだが――せっかくのいい考えが作家の無力のため、或ひはあせり過ぎのためいい質を結ばなかったもの。その三、取り立てていふほどのものでもないといふ點を除けば、特に作家としては文句のないもの。これらの三種類は誰の詩集にしたところで、おのづからその大部分を占めるはずだと思ふ。といふのは、もしも作家が第四の部類、つまり作家が心から感謝するやうな詩だけしか自分の詩集に收めることができないなら、そんな詩集はあまりにも容(かさ)が瘠せすぎて、作家は少し憂鬱になるだらうからだ。
(「序」より)
目次
- 「短詩集」(一九五〇年)序
- 祈願
- 戰時に
- 漂泊者
- 一九二九年
- ドーヴァ・一九三七年
- スペイン・一九三七年
- 或る暴政者の墓碑銘
- ダンス・マカーブル
- W・B・イェーツを弔ふ
- ランボー
- 世界と幼兒
- 自由人
- 小説家
- 誰もわたしを解らない
- なつかしすぎて、とりとめなくて
- 法は愛のごとく
- 夢のごとく
- 見るまえに跳べ
- むつかしい質問
- 何がどうした?
- 惡魔が御者になる時に
- 謎
- 狩獵で暮したわたしたちの先祖は
- 動物
- 閣下
- 君の眼を閉ぢ、君の口を開けよ
- めでたし、めでたし
- 冬のブリュッセル
- 船
- 歌Ⅰ
- 歌Ⅱ
- 歌Ⅲ
- 歌Ⅳ
- 歌Ⅴ
- 歌Ⅵ
- 歌Ⅶ
- 戰ひの時にⅠ
- 戰ひの時にⅡ
- 戰ひの時にⅢ
- 戰ひの時にⅣ
- 戰ひの時にⅤ
- 支那のうへに夜が落ちる
評解
オーデン點描
年譜
原詩目次と第一行