1952年12月、三一書房から刊行された安東次男(1919~2002)の第3詩集。
ここに攻めた二十七篇の詩は、ぼくが意識的に詩らしいものを書き始めた一九四九年以後現在に至るまでの作品から拔いたものであります。篇中「佐渡、黄金風景、緩衝地帶、塵芥運搬人、薄明について、大古墳、故郷のなかの異國にて、女たちへの讃歌、シャン・ド・マルスの歌、囚われの五月」は詩集「六月のみどりの夜わ」に収めてあります。「テルコとナナ」は同詩集中の「タヴァーリシチ女房よ」を、「にわとりの歌」は、「にわとりの資本論」を書改めたものです。その他の作品についても少しずつ手を加えました。「死者の書」から「太陽」(舊題、「卵」)までは詩集、「蘭」より拔きました。從ってそれ以外の、「ビールと花とうっとりとした風景、愛とは、日本脱出、日本の梅雨、秋の島についてのノォト、石、罰當り」の七篇が今までの詩集に入らなかったものです。製作時期は全篇通じて大體年代順に並べてあります。ただ「ビールと花とうっとりとした風景」は「囚われの五月」のあとに並べるべきものですが構成上前へ移しました。ぼくには今、生理的にではなく、意識的に、畫と夜の、二種類の歌しかありません。このシルエットをどのように設定されるかは讀者の皆さんの自由です。
(「あとがき」より)
目次
- 佐渡
- 黄金風景
- 緩衝地帶
- ビールと花とうっとりとした風景
- 愛とは
- 塵芥運搬人
- テルコとナナ
- 薄明について
- 大古墳
- 故鄕のなかの異國にて
- にわとりの歌
- 女たちへの讃歌
- シャン・ド・マルスの歌
- 囚われの五月
- 日本脫出
- 死者の書(未來風景I)
- 海戰(未來風景II)
- 死刑宣吿(未來風景III)
- 證人
- 樹木開花(開花期I)
- 蘭(開花期II)
- 磔像(開花期III)
- 太陽
- 日本の梅雨
- 秋の島についてのノオト
- 石
- 罰當り
あとがき