1972年8月、山梨シルクセンター出版部から刊行された新藤千恵の第2詩集。装幀は山口勝弘。
前詩集『現存」につづく詩作をあつめました。
この詩集に、目の覚めるような解説をお書き下さった大岡信氏に、お礼を申しあげます。とりわけ一篇の詩を丁寧に見ていただき、ありがとうございました。
題名のマニエリスムについてお答えすべきでしょうか。
この詩集はコップから窓硝子まで、硝子体で、見えないところを見えるように書いたっもりです。マニエリスムは、このひどく迂遠な進行を示している詩集に適切な題名と考えました。型化、マンネリなど、よくない面よりも、固定観念をこわすのにむしろ創造的であるというふうに、私は思い、採用したのです。もっともこれらの言語は、みんな裏側から見られた言語です。
日本語の体がねじれていることは、心苦しく思われますが。
私はさきごろ、ようやく卵の殻が破れて、宙の子宮のほぞの緒のようなのを食いちぎった気がしておりますので、これらの詩はみんな脱け殻のようにも思えるのですけれど。
御忠告を感謝します。
(「あとがき」より)
目次
- コップと海
- 不正のカタログ
- 氷と炎の歌
- 黒・薔薇・金
- クレーンの空
- アパッショナタ
- メタフィジックの扇
- 扇のノクチュルヌ
- 変形
- 石の夢
- 鹿の変幻
- 宙吊りのヴィジョン
- 架空の坑道で
- マ・コロンブ
- 宝石のデザイン
- 雷(ライ)の花
- 心はアラフラの海
- 疾風のマニフェスト
- バロック風の二つの四行詩
- 網打ち
- 硝子切りの詩
- マニエリスムの人魚
- ト字記号の薔薇の花
- レヨナン様式の薔薇の花
- 夜明けの通過
- アラベスク
- 潮風の見たもの
- ゴルゴンへ・愛と告別
- 植物相・断片
新藤千恵の詩=大岡信一
あとがき