火喰鳥 原桐子詩集

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 1977年8月、詩学社から刊行された原桐子(1924~)の第2詩集。装画は山崎猛。第2回現代詩女流賞候補作品。刊行時の著者の住所は茨城県常陸太田市

 

 真夏のうだるような日、太陽の黒点と火葬にされた母の真っ黒に焼けのこった腰の部分が、かさなって見え、私は<子宮に始って子宮に終った>女の一生を脳裡に深く刻みつけられました。シーツの濡れた凹みが私の掌にあり褥瘡を怖れて横にするとされたまんま、意思をもぎとられた身体。吸いのみからの汁の流れが止まる・動く・止まる・こんな母を置いて出勤する私の背に母の目が貼りついていました。わたしが着いたとき、わたしがあなたを抱きとったとき、待っていたかのようにあなたは頭を垂れました。
 「火喰い鳥」「マグダラのマリア」「恩寵」「虫喰いだらけの風景」から成るこの詩集は女の背負っている罪や業のようなものが珠数になって、ひとつ・ひとつの子宮でつながっております。私の看病の力尽きた時、母はそれを察知したかのように風景の彼方へと飛び去りました。昭和五十一年七月二十八日(水)午後零時三十分、往年七十一歳。
 亡き母の一周忌を控えて、私は第二詩集を出すべきかどうか迷っていました。できれば同じ子宮をもつものとしての詩を捧げたいと思っていたからです。はからずも、星野徹先生の熱心なおすすめとご助言をいただき第二詩集「火喰い鳥」を出版する運びになりましたことを心から感謝いたします。また、病いをおして特にこの詩集のための跋文をお寄せ下さいました石原吉郎先生、詩集出版のためお骨折をいただいた嵯峨信之先生、ほんとうにありがとうございました。
(「あとがき」より) 

 
目次


火喰い鳥

マグダラのマリア

恩寵

虫喰いだらけの風景

跋 石原吉郎
あとがき


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