2000年1月、書肆山田から刊行された関口涼子(1970~)の第3詩集。装幀は青山杳。
作品になりかけた言葉が一つの形を持つことができず終わるとき、そこにはどんな理由があるのだろうか。作品の中に住まおうとしない言葉の断片、読点をきっかけに逃げてしまうような数行の文章のかけらばかりに囲まれて暮らしていた頃、書こうとしていたテクストの構造自体が内包する問題もさながら、形になることを拒否し、テクストがあるところまでくると、自らを致命的に終わらせようと果敢に試みる文章の訪れにはきっと何かの意味があるのに違いないと薄々感じていた。一方的な描写と固定した関係、nomination、ノスタルジー、積み重なるばかりの記憶などに疑問符を付ける行為を、Sで始まるテクストとは言い難い、しっかりとした目的地を持たず小石のように置かれた文章と、はしゃぎながら構造を複合化しかつ壊してゆく図形、自分たちに関係のありそうなあまりにもあやうい場所を見かけたときだけそれらの断片は集まってくれて、でもそのたびに作品を終わらせかねず実際に終わらせ、名付けられることをついに拒み、作品の中に落ちつくことも嫌がって、この辺に今もうろうろしている。理由を高らかに開示するのではなく、駆けぬけてゆくそれらの断片が紙の上にちらりと姿を見せることもある、そのことだけを示したかった。これらの作品たちは一九九二年から九六年、「詩」を書かなかった時期の言葉たちや、今はもう存在しない、沢山の作品の痕跡をかすかに窺わせる断片たちのかたわらで、書き継がれては消されることを繰り返し、新しく現れた言葉たちとの交流やそっけないすれ違いなどを経て、九七年から始まり、九九年四月七日から一八日の間にまとめられた。
(「あとがき」より)
目次
- (単線の…
- 片目の人にボールペンのキャップはかぶせられない
- 歯科医の変革期
- 1 後から見る
- 2 発言と水
- 螺旋に賭けろ
- (今、そこで…
- 言葉が人間より先に死なないなんて誰にも言えない
- アーティキュレイション、通過点としての
- 1
- 2
- (想像される…
- 魚眼のランドスケープ
- 1
- 2
- 盛夏の文法(二人でお茶を)
- (乱反射と…
- 「牛からできたもの。」
- 円形への意志
- 1 interior
- 2 ここを通る
- 3 exterior
- 盲人のためのボタン(常にかすかな凹凸のある)
- récipient の中身を、どうしたら水銀からただの水に戻すことができるか
- a 庭園修行、ほかいろいろ
- b 何故このようないきさつに
- (どの文字で…
あとがき
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