1998年7月、青蛾書房から刊行された井之川巨(1933~2005)の第7詩集。装幀は山崎晨。著者は東京生まれ、刊行時の住所は品川区大崎。
五年ぶりに詩集を出すことにした。この五年間に何があったかと振り返ると、母をはじめ何人かの肉親や親しい友人を亡くした。僕自身は目を病んだ。健康がとりえの妻も病んだ。そして、二人とも確実に年をとった。目を周辺に転ずると、社会主義への幻想が消えたのが、この期間の特徴的な出来事といえようか。そのぶん、環境問題への関心が急速に高まり、ゴミや大気汚染などで、自分の尻にも火が点いてしまった。
僕の詩が近ごろ変わってきたという友人がいる。しかし、僕自身はあまり変わったとは思っていない。ただ以前ほど大声を上げたり、拳を突き上げるような詩をあまり書かなくなっているのは事実だ。
これまでの詩集はほとんど自選したが、この詩集では旧くからの友人西杉夫に詩の選と跋を依頼した。作品の初出はほとんどが詩誌『騒』で、ほかに『新日本文学』、詩誌『眼』に発表したものがある。この間に書いた作品のほぼ三分の二がここに収まった。装丁はやはり旧い友人の山崎晨にお願いした。残るいのちで出せる詩集はあと一冊か、二冊か、などといま考えている。
(「あとがき」より)
目次
・日本海で泳ぎたいと夢見た
- 日本海へ
- 我慢
- 兎と亀
- 見えない糸
- 獲物
- 笑った顔
- 海軍の叔父さん
- 喧嘩
- 草刈り
- 初恋
・セピア色の街
- 初日
- シマウマの風景
- クラミジア菌
- 川
- 椎の実
- 都市の時間
- 雨の午後
- 朝
- 猛暑
- 世界地図
- 記憶
- この道
- 大工さん
- 螺旋階段
- ビールスの夏
・雨は天から涙は目から
- 結膜炎
- ボロボロ
- 鳥の目
- 目と足の関係
- その目は
- インスタントシニア
- 消えたハーフトーン
- 腐れ目
・まだ生きてますか
- 鏡の顔
- 迷路
- 墓地
- 苦労
- 生
- お花見
- おい兄弟
- ハイ・ミス
- 歳月
- 大切に
- 老化現象
- Oさんの猿山
・今日の味方は明日の敵か
・伝説の男
・よっぱらいの死
・かみさんと階段
- 階段
- 酸欠
- 散骨
- 散骨
- 百三十歳
- 墓参り
- 茶碗の音
- お賽銭
- 職安
- ハイハイ
- 殺し屋
- ニンニク薬
- 母と妻
・愛と逃亡
・ケイコの子守唄
・ケイコ病む
NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索