2011年9月、七月堂から刊行された辻和人(1964~)の第4詩集。
3冊目の詩集を出した後あたりから、書く詩がもう「詩作品」としての体裁を保っていなくても良いのではないか、という気持ちが強くなってきた。詩は単に「文」でありさえすれば良い、比喩の使用は必要最小限に止める、行は気分で分ける、ストーリーは尻切れトンボでも可、その結果他人から「詩作品」とみなされなくともかまわない。
刹那的であることを優先していくと、詩はどんどん「詩作品」から遠ざかって「行分け文」に近づいていく。その方が時々の気持ちを自由に表現できるし、楽しい。何より、「詩作品」としてどうかより、読んだ人にどんなインパクトを与えられるかということに集中できるのがいい。但し、形がフワフワでユルユルなので、何がどう伝わったのか、不安は残るのだが……。
本詩集は2部構成となっている。前半の「隙」は日常生活の脇道に逸れた想念を膨らませたもの、後半の「猫」は住んでいるアパートの近くにいるノラ猫たちとの関わりを描いたものだ。2分冊で出すことも考えたが、あえて1冊にまとめることにした。想念の記録と実体験の記録のワンセットで、自分でもよくわからなかった自分の一面が浮かび上がるのではないかと思ったからた。何より、ぼく自身がそれを知りたかった。こんなことが他人にとって興味の対象になるのかとうかはやはり不安だが、「文」にしたということは、ぼくが言葉の力を信じているということなのだろう。
この詩集を、詩人であり画家であった、亡くなった叔母の福田万里子と、猫のファミ、レド、ソラ、シシ、クロに捧げる。そして、詩集を制作して下さった七月堂の皆様、ありがとうごさいました。
(「あとがき」より)
目次
i 隙
- 本当にあったこと
- 聖なる印
- 呪い
- 誰?
- ハッカの味
- いたっていいじゃん
- 喋らなくなった床屋
- イナバウアーのその後
- 「笑顔」
- 女王様を救った蛾
- 一方的
- 軌跡の姿
- まだ
- 見えないものと動かないもの
- 必ず
- 語ることはない
- 約束のない日曜日
- 笑って感じる
- なりたい姿
- 膝をかかえて
- 友達の声
- 満足
ii 猫
- いじめ
- ノラ猫にまつわるこれまでの話&その後の話
- 爪と牙
- 孤独の先生
- 妄執?
- 昇格
- 太らせる
- 良かった
- 真空行動
- 月下の一群
- 万葉の心
- ウルトラ兄弟磔
- ノラ猫にまつわる大変な話
あとがき
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