2006年11月、七月堂から刊行された根本明(1947~)の第7詩集。装幀は直井和夫。著者は宮崎県生まれ。
蓮の葉群れのなかに紅の蕾が突き立っている。二千年前の地層から発見された一粒の種に始まる蓮の繁茂は、時間の古層が不意に立ち現れることを示すかのようだ。コアジサシが高みから水面に鋭く落下しては舞い上がる。ここが入り江であった時代から続く営為なのだとすれば、見るものをそのまま古い光景へと遡らせることになるだろう。この池をめぐっていくつかの言葉を得たが、こうした折り畳まれた時間の襞についてのことだった気がしている。
詩集におさめた詩の多くは、詩誌「hotel第2章」、五年ほど続いた同人誌「n」に発表したものであり、他に「櫻尺」、「夢人館通信」、「letter」、「midnightpress」、「現代詩図鑑」に掲載させていただいた。表題詩は『千葉県詩集』に書いたものだ。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 光のくさり
- 光のくさり
- ランナー
- まばゆい日
- 破れめは
- 色無し
- 差し出されて、しずかに開き
- はてだからか
- 廃の家で
- 私は知らないけれど
- 思い出せないままに
- 市蔵という名で
Ⅱ 未明、観覧車が
あとがき