2020年11月、本多企画から刊行された門田照子(1935~2022)の第10詩集。著者は福岡市生まれ。刊行時の住所は福岡市。
一九六〇年に結婚した私たちは、当時流行りの団地生活を始めた。樋井川に沿った2Kは、トイレは水洗だったが和式、冷蔵庫や洗濯機の置き場もない。共働きだったので必需品の冷蔵庫は居間の畳の上に、洗濯機は玄関に置いた。ここで十年間、子供が二人になり、私は専業主婦になった。夫の勤務の都合で一時期3DKの一軒家に住んだが、子供たちが小学生時代に、また3LDKの分譲団地に引っ越した。ここで二人の子供は大学生になった。
合計二十年間の団地暮らしの、まだ若かった時代の多彩な出来事のあれこれを書き残しておこうと、本多寿さんが「禾」を創刊された時に参加して散文詩を書き始めた。丁度「禾」二〇号まで続けて一冊に纏めたかったのだが、身体の弱い私たち夫婦は共に不調の日が多くなり、老々介護に時間を取られ、ついそのままになっていた。
夫が亡くなって十年、詩集二冊とエッセイ集を纏めるうちに私の病気は進行して、在宅酸素の暮らしとなり、あれこれの作業が出来なくなってきた。現在、息子は東京で独り暮らし、娘は家族四人で海外に住んでいる。一人になった私は、鉄筋の老人ホームの2Kで生活するようになり二年が過ぎた。六十五歳以上の年寄りが百数十人屯している団地のようなものである。ここに越して来て、置き去りにしていた団地の物語が気になり始めたのだった。初出はすべて「禾」に書かせてもらったものである。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 新しい家族
- 三輪車の停車場
- 転居願望
- 白いひと
- 昆布のお化け
- サングラス
- お母さんの行方
- 隣人との訣れ
- さよなら団地
Ⅱ
- 花の季節
- 歩く夫婦
- 老人の物語
- ギターを弾く少年
- モノ売る老女
- 仮面紳士
- 窓の光景
- 料理をする老人
- 産地直売店
- さくら並木の下
- 移りゆく四季
あとがき
略歴
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