1978年1月、短歌人会から刊行された藤森益弘(1947~)の第1歌集。装幀装画は金城龍男。著者は大阪府生まれ、刊行時の著者の職業はサン・アド勤務CMプロデューサー。
八月にはいると雨ばかり降り、気温の上がらない日が続いた。そのさむい夏の終りに、やっと一冊の歌集をまとめ終えた。歌を書き出して五年余の、そんなに多くない作品の中から三〇〇余首を選んでまとめた僕の第一歌集である。『黄昏伝説』と名付けた。
思えば、青春時代と呼ばれるその時期に、多くのものと僕は出会い、多くのものが僕から去っていった。その度にかろうじて書きとめたこれらの歌が証明しているものは、僕の青春の豊かさか、それとも貧しさかもとより本人にわかるはずもない。だから自分の歌については多くのことは言うまい。今はただ、どんな愛憎がそこにあったにしろ、それら去っていったものへ、心を鎮めて、僕の歌を遺ろうと思う。
ここまで歌を書き続けられたのは、「短歌人」の高瀬一誌氏と小中英之氏のおかげである。両氏の厳しさと優しさがなければ、この歌集も生まれるはずはなかった。とりわけ小中氏には、何度も細部にわたって適切な助言をいただいた上に、やっかいな解説までお引き受けいただいた。装幀は友人である金城龍男氏にお願いした。熱意をこめた彼の装幀や装画に十分満足している。また、多くの優れた友人に恵まれたことも幸いであった。深く感謝してやまない。
今、三十路に立っている。此処まで来て、これから何処へ行くのか……。ただわかっていることは、もうこんなことを、こんなふうには歌えないし、歌わないだろうということだけだ。そしてこれから僕の行くところが、たとえ何処であれ、此処よりさむきところであろうことも、確かな予感として僕にはある。
(「後記」より)
目次
- 冬の響
- 春の砦
- 夏の闇
- 秋の弦
- 弑春季
- 海からの声
- 黄昏の国・黄昏の橋
- 恋唄'75あるいは街の神話
- 蒼き雅歌
- Far from the God
- 火の宿
- 此処よりさむき
- 愁乱抄
断片的調書 小中英之
後記
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