1948年1月、新星社から刊行された壺井繁治(1897~1975)のエッセイ集。
この本は私の最初のエッセイ集であり、一九二三年から四七年に至るまでの二十五年間に亙つて書かれたものの中から、詩に闘する感想・評論のみを選び出して、年代順に収録した。このほかになお詩に關するエッセイが一冊分位残されているが、それは他の出版社から發行する豫定となつている。
私がこの文章を書きつけた二十五年間は、第一次世界大戦と第二次世界大戦とにつらなる、國際的にも國内的にも最も激動的な時代であり、この激動の時代の中にあつて、私が詩人の一人として、どのような文學的自覺に到達し、またどのような世界観を把握したかが、大體において語られていると思う。私は主として詩について語りながら、これらのエッセイを通じて、藝術・文學に闘する私の根本的な考え方を披瀝したつもりである。したがつてこの本は私の詩論集であると共に、もつと廣い意味での文學論集でもあるわけである。
この本は四分の一世紀にも亙つて書かれたものを一冊にまとめただけあって、全體として見る場合、文章のスタイルにおいても、思想においても、用語においても、幾多の矛盾や混亂や不統一をさらけ出しているかも知れない。殊に初期のものの中に盛られている私の考え方と矛盾する部分が相當にあると思われるが、それをそのまま収録したのは、私の考えの變り方や發展の跡をあとけることによつて、今日の私の立場をよりよく理解して貰いたいと考えたからである。
(「はしがき」より)
目次
はしがき
- 西條八十と高橋新吉・一九二三年
- 未來派詩人の小便・一九二四年
- 白鳥省吾論・一九二七年
- リアリズムの根據・一九二七年
- 短歌を通して見たる啄木の一面・一九二七年
- ハイネにおける矛盾・一九三四年
- 詩及び詩人について・一九三五年
- 諷刺詩にづいて
- A 諷刺文學に關する諸問題・一九三五年
- B 諷刺文學の擡頭・一九三五年
- C 諷刺文學私見・一九三六年
- D 諷刺詩についての感想・一九三六年
- E 深切一平氏に答へる・一九三六年
- 詩の仕事と年齡・一九三六年
- 私の好きな詩人・一九三八年
- 詩と言葉の問題・一九四〇年
- 民謠に關聯して・一九四〇年
- 現代と詩人・一九四一年
- 科學と詩について・一九四一年
- 小熊秀雄斷片
- A 小熊秀雄のこと・一九四一年
- B 靜かなる小熊秀雄・一九四一年
- C 遺稿について・一九四一年
- 近代的精神について・一九四六年
- 高村光太郎・一九四六年
- ふたりの詩人・一九四六年
- 啄木隨想・一九四六年
- 萩原恭次郎斷片・一九四六年
- 民衆と詩人・一九四七年
- 近代詩史の一頁・一九四七年
- 詩におけるレアリズム・一九四七年
- 短歌と批評的精神・一九四七年
- 現代詩の危機・一九四七年
- 詩人の責任について・一九四七年
- 働く人たちの最近の詩について・一九四七年
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