2002年11月、宇多出版企画から刊行された川崎彰彦(1933~2010)のエッセイ集。装幀・装画は粟津謙太郎、挿絵はうらたじゅん。
これは一九九七年三月から奈良新聞の文化欄に、同じ「くぬぎ丘雑記」の題名で、最初は月一回、途中から月二回の割合で連載したエッセーのうち百十九回までを収めたものである。
最初のうち、奈良新聞であることを強く意識して奈良をテーマにしたものを書こうと多少無理をしたが、やがてあまり奈良にこだわらないことにしよう、と方針を変えた。その方が私らしい自然体になれると考えたからである。連載中は奈良新聞の担当者(いちいちお名前は挙げないが)にひとかたならぬお世話になった。私は病気以後、調べながら書くことが物理的に困難になり、おぼろげな記憶に頼って書くため、恥ずかしいことだが誤記や誤字が多かったのを適切に改めてくださった。この場を借りて厚くお礼申しあげる。また私の文章は多岐に散乱して焦点が定まりがたく、さぞ見出しを採りにくかっただろうに毎回巧みに処理してくださった方々にも深謝している。(本書では見出し省略)
装丁の粟津謙太郎画伯には毎度コンビのようにお世話になるが、初めて挿し絵で飾ってくれた新進漫画家うらたじゅんさんは私の北河内時代からの親しい友である。思いがけないことには「萌の朱雀」などで尊敬する奈良出身の映画監督・河瀬直美さんが帯文を書いてくださった。版元・宇多出版企画の宇多滋樹君は私の古くからの友人である。また、連載の新聞を切り抜き保存してくれた「文学ひろば」の藤岡加代子さんにも、ありがとうをいいたい。こうして友情の結晶体のような本ができたことを心から喜んでいる。
(「あとがき」より)
目次
・1997年
・1998年
- 古都の越年
- 翔べ 河瀬直美さん
- 高畑春隣
- お水取りのころ
- 奈良百景展
- 御杖村へ
- 花のもと句会
- コブシの記憶
- さらば四万十薫
- フジの飾灯
- ホタルの季節
- セミの声
- 水べの情景
- 出穂さんを悼む
- 昆虫少年の口笛
- 虫の声
- 信男俳句を読む
- 晩秋の大和
- 佐多稲子さん
- モチつき回顧
・1999年
- 新春つれづれ
- 成人式いまむかし
- 吹きそむる東風
- 春浅き追分
- メダカのゆくえ
- 春草の香り
- 俳句閑話
- ゆく春や
- 青葉ごろ
- 緑陰の読書
- カッコウの記憶
- わが「戦後」の死
- カヌーの速度で
- カンナ燃ゆ
- らっせ らっせ
- 虫を聴く会
- 詩人の遺著
- 煙雨の東海道
- タヌキばやし
- おでんの湯気
・2000年
- 今世紀最大は?
- どんど焼き
- フグ懐旧談
- 無償の精神
- 早春の散歩
- 大自由人の像
- 大相撲のこと
- ことしの花
- 鳥の声
- カラスのこと
- 五冊目の詩集
- 民話のすすめ
- 弱い者いじめ
- この女性像
- 虫の世界
- 盆のころ
- 海峡の秋
- 流行歌に思う
- ソバの花追想
- 玉の海
- はるかな尾瀬
・2001年
- 落語のこと
- 冬ごもり読書
- 高畑の春
- 大家の面影
- エスペラント
- 北の巨人像
- 八十八夜のころ
- 雨の季節
- 生き物の池
- 子供の受難
- 夏は来ぬ
- ムクリコクリ
- 山風を浴びて
- 高校野球の夏
- 乱読の日々
- 昼間の月見?
- 詩人への献花
- 向寒の時節
- 旧友の他界
- 「方丈記」に思う
・2002年
- 世紀最初の年
- フクロウの森
- 年末来の読書
- 指導者の資格
- 鎮守の森は?
- 食肉あれこれ
- 春灯下の読書
- 同時代の合奏
- 歩行者の思想:
- 正義は一つか
- ある女性の道
- 祭りの後の思い
- 面白い歴史物
- 南島の思い出
- 卓抜な大阪論
- 木津川べりで
- タマよ逃げろ
あとがき