1990年4月、詩画工房から刊行されたたなかよしゆき(1950~)の第4詩集。装画は灰掛博。著者は大阪府河内長野市生れ、刊行時の住所は奈良県大和高田市。
「掃除男』はわたしの第四詩集です。
この数年、わたしは短い詩ばかりを書いています。詩というものは短い言葉のなかに、深い魂をとじこめておくものだという思いがあるからかも知れません。でも、わたしは二十歳のころ、散文詩から出発したので、また散文詩をかきはじめるかも知れません。
制作時間の順序はだいたい、小さな出来事→掃除男→日々の詩といった流れになっています。
これらの拙い、詩とよべるかどうかもわからない作品たちが、もし読んで下さるひとの胸に何かを残すなら、作者として、これ以上の喜びはありません。
これからも、わたしは〈掃除男〉のように不器用に働き暮らしながら、言葉の世界を探索し採集してまわるでしょう。それが天へつづく階段であればいいのにと思いながら――。
掲載誌一覧は省きましたが、これらの詩を発表させていただいた詩誌は、森、諦、凪と嵐、反架亜、近文、詩と思想、大阪詩集、遊撃、すみれ通信などです。編集ならびに発行人の方々にひとことお礼申しあげます。
最後になりましたが、装画を寄せてくださった灰掛博さん、詩集をつくってくださった詩画工房の志賀英夫さんに、心よりお礼申しあげます。ありがとうございました。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ 日々の詩
- それらを見ながら
- にわぜきしょう
- つばくろ
- 木よ
- 指笛の
- イソコモリグモ
- 朝のラッシュアワー
- 並木道を歩きて
- 歩きたくなる
- 雲になりたい
- きんえのころ
- あおぎりの種子
- 涙をすこうし
- わたしは願う
- こころが光りだすようなものが
- 聴えてくる声
- 金の糸銀の糸
- たましいの井戸
- わたしの父は豆腐屋
- 孤独な背中の男のことを
- 小さな犬
- 弁当をひらく
- 遠くをみつめる青年よ
- 白鷺
- 少女の素足
- 夏の日
- 草のにおいをかいで
- 雨が欲しい
- 秋のひかり
- 夕ごはんは手づくりギョーザだというので
- 一日働きおわって
- 立ち呑み
- 雀蛾
- 停車場
- 重き暗き朝なり
- 寒い道
- 花泥棒
- 暗い朝
- ほうれん草と鶏肉のバタ炒めが
- 缶コーヒー
- パンと牛乳
- 稲妻
- ニセアカシア
- 振子時計
- 紫陽花
- クヌギ赤い穂を垂らす
- 黒い鬣
- 夕暮れ
- 冬の朝
Ⅱ 掃除男
- 掃除男
- 電話男
- 漁る男
Ⅲ 小さな出来事
- くもとおはじき
- 雨の日の椅子
- 冬の朝
- 脚に光が
- 蚊
- 野鳩
- 境時計店
- 雀の子
- ひしばった
- 木の根株のこと
- フラフープ
- 物干し台
あとがき