1988年9月、七月堂から刊行された原桐子(1924~)の第4詩集。装画は宮田はるみ、装幀は宮田登美子。刊行時の著者の住所は茨城県水戸市。
遠くから蹄の音が聞えてまいります。あっという間もなく彼方へと走り去る……。その瞬間を詩に託してみるとき、現代に、狗奴国末裔の男たちの闘争の舞台、その爪跡としての女たちの島をみるような思いがいたします。神から解き放たれた者たちの不安と時代の証をまさぐる積りで「おお晴れの舞台」等を書き記してみましたが、<核家族>、それすらも危うい現実をふまえ、二十一世紀には、どのような現代詩が生まれ出るのでしょう。この詩集に編まれております詩篇には、星野徹氏のT・S・エリオット論『車輪と車軸』、笹倉貞夫氏の評論集『詩的自己同一性』の影響を少なからず受けている作品が散在いたします。従来の内へ内へと向っていた作品と異なる印象を与えますのは、その故でもございましょうか。
詩集実現にあたり御助言いただきました星野徹氏、寺門仁氏、七月堂の木村栄治氏、装幀を快くお引き受けくださいました「翼」同人の宮田登美子氏に心からお礼を申し上げます。(なお、装画は二十代の若さで他界なされました御令嬢、はるみ様のかけがえのない作品でございます。)(「あとがき」より)
目次
1
- 蹄の音
- 女たちの島
- 狗奴国異聞Ⅰ
- 狗奴国異聞Ⅱ
- 今日も誰かが
- おお 晴れの舞台
2
- 花曇り
- わたしという季節
- 航海について
- 糸ぐるま
- 時の扉
- 野ざらしの野
- かげろう 。
- 島
3
- 時間の暗闇からⅠ
- 時間の暗闇からⅡ
あとがき