2007年10月、角川書店から刊行された大井学による浜田到(1918~1968)の評伝。装幀は田口良明。
「かりん」の中の、小さな、けれど刺激的な勉強会がきっかけで浜田到を知った。破調の中に響く独特の世界に、自分が求めていた歌を見たような気がした。詩世界と哲学とが融合した美しさに、僕はもう自分では創作する必要がなくなった気分にもなった。勉強会向けのレポートとは別に、もっとこの作者の作品が読みたかった。国文社の現代歌人文庫に収載されていた略年譜をもとに浜田到を追い始めたのは、その勉強会の後、程なくのことだ。
富子夫人が大事に遺した資料に僕が辿り着いたのは、だから、その勉強会に参加していた歌友達を抜きにしては語れないし、岩田正・馬場あき子の両先生が居なければ、ここまで纏まりもしなかっただろう。「鬼のような催促」という喩があるが、ほんものの「鬼」に原稿を急かされる経験は本当に貴重だ。
到の資料を保管して下さっている大徳さち様には、御家族様全員にまるで親戚のように面倒を見て戴き(かつ御迷惑をお掛けしましたし、東田司様、八汐阿津子様、川涯利雄様にも種々の御面倒をお掛けしました。
本文中に引用をした数々の資料についても、御本人様や著作権継承者の方に許可を戴けたのが何よりの幸せでした。本多正一様には中井英夫様の手紙を御確認戴き、また公表することに御許可を戴くことが出来ました。同様に塚本靑史様には、塚本邦雄様の手紙を御確認戴き、且つ正確な略年譜まで戴くことが出来ました。岡部桂一郎様と奥様の由紀子様には、桂一郎様の療養生活中にも関わらず、御会いすることが出来、また貴重な「工人」の資料を御借りすることが出来ました。冨士田元彦様、笠原伸夫様、葛原妙子様の手稿を御確認戴いた猪熊葉子様、皆様から、不躾な僕の手紙に対しても御丁寧に御返事戴くことが出来ました。坂井修一様からは御忙しい中、身にあまる帯文を戴きました。
(「あとがき」より)
目次
序章 前史
- 第0章 「手稿」について
- 第1章 詩人誕生
- 第2章 詩神富子
- 第3章 到の戦争
- 第4章 「歌宴」と「工人」
- 「歌宴」
- 「工人」
- <エッセイ1> 煙草
- 第5章 モダニズム短歌特集
- 第6章 「太陽を西へ」 詩と短歌
- 第7章 邂逅と対決
- 「短歌」への登場
- 畏友塚本邦雄
- 同時代の評価
- 〈エッセイ2〉 文房具
- 第8章 緘黙と訣別
- 第9章 「晩熟未遂」再考
- 第10章 メタフィジカル短歌試論
<資料集〉
資料1 『架橋』 初出一覧
資料2 鎮魂歌――掌への郷愁
資料3 浜田到宛岡部桂一郎書簡
あとがき
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