2007年1月、思潮社から刊行された佐藤勇介(1979~)の詩集。
収録した34の詩篇は、二〇〇四年の七月頃から、二〇〇五年の七月頃に渡って、約一年の間に書き留められた。当初から連作を目論み、配列は制作順に依っている。終わるべき詩篇数は34と定め、各章ごとの方位のばらつきは、その予め定められた錘に依拠するところが大きい。そのため、詩篇の削除・取捨はこれをおこなわず、書き終えたのちの推敲も各詩篇せいぜい一、二ヶ所に停め、1から3へ向けて継続させる筆記の推移を残すことをもって方針とした。
音韻はたわむれではなく、むしろ無名のシナプスの衝迫を尊重した。それがまたある私的限界を自ずから規定するところが、提示する根拠であるけれども、図りきることの出来ない無名性を招び込む期待は、メディアを祖とする個体間のシナプスという、共通記憶のようなものを指定することにより敢えて方法として取り入れた。引用・変奏・参考文献・固有名等もここに含まれたいつでも共有・閲覧可能な記念物として顧慮した。だが個人が形作る記憶や、個人間の記憶の共有などおそらくたかが知れているから、ペンを持って書くことに別の何がしかの意図を見出そうとも試みずにはおかない。
題名の「リーベ」とは何かと問われれば、リチウムとベリリウムのことであり、元素の周期表の一般的な暗記法の一つをそのまま取り題とした。これは各地域や、年代により、その語句に種々の異曲が存在するようである。
末筆ではあるが、ご担当いただいた編集部の亀岡大助氏、ご協力いただいた各方面の方々、両親・友人に謹んで感謝の意を申し上げたい。
(「あとがき」より)
目次
- 溢れ始める文献を押さえ
- 君は左足から起きたのか
- この疑心暗鬼またしても
- 轟音雄叫び狂い果たせ
- こんなはめになるとは思って
- あしたへの恐怖それを引き
- おお悔い改めよぼくらの誤り
- 大天使ミカエルを待望する
- 酔い潰れたきみはだが決して
- 車を疾走する疾駆する馬は
- 署名のない音楽独奏のため
- 愛くるしいは10年間許せ
- ややけくそさぼくはギ
- 自分で自分の首を締めて
- きみが出かければ
- 朝起きて服を着る歩く
- …に於ける署名とは座標を
- これはいま運命に試され
- 酒酒に酔うのも悪く
- 瞳を閉じよ根を張れ
- アイデンティティのテレポ
- 肩ごしに見える風景を
- 何もかもぶっ潰れてしまっ
- 歯の浮くような生涯ですひど
- まず稲妻があらわれる次に
- 板チョコ一枚買う事が
- 糞タレのたれの餓鬼ああ
- 逆巻く鳴門辺りで少女達が
- こんな日溜り
- 何の雪乱れて今朝は極北
- 落雷があるその後に風が吹く
- 一日千秋の如く今日も血の雪
- カナリアのきつゝき
- 手の平に死
あとがき
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