1981年12月、七月堂から刊行された鄭仁の第1詩集。装幀は倉本修。
この詩集に収めた作品は、一九八〇年の一年間を通じ、月刊誌『文学学校』に連載した十二篇、他に一篇を加えた十三篇と、一九五六年から一九六〇年初頭にかけて『ヂンダレ』その他に発表した一五篇によっている。1に収めた前半の七篇と2に収めた前半の六篇が一九八〇年に発表したものであり、その他が昔の作品である。
私は且って、同人詩『カリオン』(一九六三年二月)に、金時鐘、梁石日諸兄らと共に詩集の近刊予告を出した事がある。それから二〇年近い歳月がやって来て、あっけなく通り過ぎた。今このような形であまりにも遅すぎた予告を果せるようになって、今更のように汗顔の想いが強い。
畏友金時鐘の変らぬ友情と、励まし、大阪文学学校の若い友人高村三郎氏や野口豊子さんらの強い勧めがなかったなら、この本は世に出なかったであろう事を記して、私の心からの謝意に変えたいと思います。
(「あとがき」より)
目次
1
- 走る
- 椅子と投身
- 鳩よ 眠るな
- 交叉点
- 感傷周波
- 風景を計量できるか
- 小さな手の陶酔
- 空を行く
- うまずめ
- 運河
- 鉄
- 街
- 証人
- ぼくらは一人ぼくらは二人
2
- 茶臼山
- 夏と少年と
- 一九七九年十二月八日午後三時
- 二つの夜
- スラム
- 白昼夢
- 署名する
- 海の虚構
- 罠に棲む
- 塑像
- ポーカ・フェイス
- 祈り
- 夏はめぐりくる
- 影の舞台
記憶の腑をこじる詩 金時鐘
あとがき