1991年10月、あざみ書房から刊行された宮本むつみの第5詩集。
第四詩集以来、七年が過ぎた。この間の現実は、私にとってかなりきびしいものだったにもかかわらず、今、こうしてまとめるに当り、「さて、どのように」と迷うくらい沢山の作品を書いていることに驚く。
詩は、実利的には何の役にも立たないが、思わぬ時に、私をこの現実からちょっぴりはみ出た〈もうひとつの時間〉につれ出してくれて、そのお蔭で、私はいつも甦らせてもらって来たのではないか、という気がする。
行分けと、散文と、両者抱き合わせて一つの詩集に組んでみた。私にとって両者詩に変りはないと思っている。強いて言えば、一本釣りと、投網のちがいであろうか。
詩のお蔭で、日本中に、はては外国に至るまで、心の友に恵まれ、励まされ、これからを〈ひとりで生きる私にとっては、どんなに有難いことか。『ぬけ道』上梓を機にいつも心を添えて下さる皆々様に、厚く厚く御礼申し上げます。
(「あとがき」より)
目次
Ⅰ
- 春
- つかのまの
- 枕について
- 誘い
- 起床前
- 転換
- 時のそとに
- 時計
- お彼岸
- 九月
- 秘密
- ざくろ
- 出会う
- 破れる
- 日暮れのひき出し
- 春を待つ宵に
Ⅱ
- 風祭り
- 窓――水沼靖夫詩集に
- My Fair Lady
- 飛魂 又はヘルメスの輪
- スライディング・スクリーン
- 厨房にて
- 戸口にて
- 訪問者
あとがき