1956年2月、昭森社から刊行された堀場清子(1930~)の第1詩集。題字は篠田桃紅。
ここ一・二年の懸案だった詩集が、ひつこみ思案になりがちな懸念の間を出たりひつこんだりしながらどうにかまとまりました。初めて、おほよその作品をそろへてみた時の、手に持つた原稿の異様な軽さを、私は永く忘れることが出来ないと思ひます。本当に、自分の貧しさに対する認識ほどど、容赦なく私をうちのめしてしまふものはありません。けれどもこれらの作品のなかには、私にとつてはかけがへのない青春が閉ぢこめられてをり、それらの日日のいたみと真実があるといふことだけは断言できます。いくばくかの弱弱しい努力が、本となるのを機会に御批判をいただくことが出来、明日の私のためになにかが加はるならば、詩集をつくるにあたっての私の願ひはすべて満たされます。
ふりかへつてみると、文学部の時代から怠け者で気まぐれな。”悪い学生”だった私を、お見はなしにもならずにたえず手をさしのべて下さる服部嘉香先生の御温情ほど、身にしみてありがたいものはありません。また詩と生活の両面にいつも率直な忠言を与へて下さる山下千江さんはじめ、”詩世紀”の諸氏にも、はかりしれない励ましと啓発を受けました。
村野四郎先生からのお言葉は、貧しい詩集の船出にとつて、面映ゆいほど身に過ぎた花束です。厚く御礼を申し上げます。
(「あとがき」より)
目次
- 鬼火
- 恋
- やさしい日によせて
- 今日
- 五月に
- 旅
- 真夜中の電線にとまつて
- 他愛ない会話
- 眸
- 氷河
- 風
- 悪阻
- 海にて
- ある夜に
- 祈り
- 星
- 昼
- 泡
- あぢさゐ
- 自由の心よ
- 秋
- 初恋
- ざんげ
- 焔
- 涙
- 紅椿
- 追憶
- 空
- さすらひ
- 罪びと
- ゆうかり
- 蝶
- 悲歌
- そなたの
- 狐火
- 野草のうた
- 蛇つかひ
- 秋の終り
- 砂の上
- 観光旅行
- 海
あとがき