1984年10月、小沢書店から刊行された平出隆(1950~)の第5詩集。装丁は菊地信義(1943~)。
この本は、素晴しい自然観察者岩田久二雄氏に捧げられる。氏の手記において私が行き逢った泥、水、火、日射し、風、草木、昆虫、その他の生き物たちに捧げられる。
この本はまた、渾沌に形を与えようとした他の幾人かの死せる祖父たちにも捧げられる。
彼らの畏るべき仕事に触れて、私の言葉がどう無謀に振舞い、いまさらそこになにを寄せようとしたか。かすかなそれを、判読して得るところのある人の、最初の吸気がつくる《次の貴重な瞬間》に、切なる望みをいだく。(「あとがき」より)
目次
- (はじめの光景
- (凹地における母その他の肖像
- (胸と肩 あるいは必死の渦
- (自然観察者の手記
- (水の囁いた動機
- (死にゆく下等生命の素描
- (若い姫蜂がつぶやく
- (毒草クララの城から
- (憑かれた家主の独身の生活
- (孤独な翼手類の恍惚
- (白い山塊との遭遇
- (捨てられた雲のかたちの
- (骨の船
- (若い整骨師の肖像
- (かくして十一月は過ぎて
(あとがき)