1980年3月、潮流社から刊行された竹中郁(1904~1982)の第9詩集の普及版。第31回読売文学賞受賞。
詩を書きはじめてから何年になるか。詩のまねごとのなら中学生のころにはじめて、今日こっているものもある。
はっきりと、これは自分だけに書けるものだと云えるようなものに到達できたのは、つい、ここニ十年かそこらのこととなる。そうだとすると、それまでの四十年は、ああでもないこうでもないと、うろうろとしていたのだろう。
ここに集めたものは、そうだからといって必ずしも優れたものばかりとは思ってはいない。ただ、正直に自分の言葉で、自分の身に引き纒う生活や伝統のなかで書いてきた、とだけは胸を張っていえる。だから、大ざっぱにいえば、好きなもの、気に入りのもの、というわけ。
あれこれと種々の雑誌に発表しただけで、一向に詩集にまとめたいと思わないままに、年月は素速くすぎてゆく。足立巻一君や杉山平一君の助力、また八木憲爾さんの督促の配慮がなかったら、この本は出現しなかったにちがいない。(「あとがき」より)
目次
- あの笛
- 卒塔婆小町
- あゆ ほたる 星
- 花は走る
- ひるね
- 悼詩
- 命令
- ぶどう棚
- 伝言板
- 今天
- 井戸
- 秋詞三篇
- 友あり
- 小さい石
- しだれ桜
- 抱瓶
- 水
- ドーヴァ海峡の女
- そのノートブック
- 無言で語れ
- かなぶん
- 断片
- 知恵と胃袋
Ⅱ
- 考える石
- 見えない顔
- 三いろの星
- 赤とんぼ
- 観光日本
- 夏の旅
- 夜の領分
- 埋葬
- この太陽
- あくび
- 夕暮
- 野立看板
- 鼻毛
- 睫毛
- 別世界
- 足どり
- あくび
- 流木
- 魚の骨
- 一昼夜
- 柱のしるし
- たまごの中のたまご
あとがき