2019年9月、共和国から刊行された冨士原清一(1908~1944)の詩文集。編集は京谷裕彰。ブックデザインは宗利淳一。
富士原清一は、戦前の日本シュルレアリスム運動の中心にいた詩人である。それを受客から展開への要の時期に、極めて重要な仕事を遺した。
にもかかわらず、生前には自身の名を冠した詩集を一冊も出さないまま大平洋戦争に徴兵され、三十六歳の若さで世を去った。それのえ、戦後いくつも編まれたアンソロジー等にその作品が収録されることもほとんどなく、直接彼を知る人々が存命していた時代にあってすら、発行部数の少ない掲載誌の散伏なとによって、作品に触れることが困難な「幻の詩人」だった。
ようやく富士原清一の個人詩集が鶴岡善久氏の尽力によって編まれたのは、戦後も四半世紀を経た一九七〇年のことだ。これまでにもたらされた十九の作品が読者を魅了してやまないまま歳月が流れ、二十一世紀のいまにいたる。
本書は、詩人の早すぎる晩年に刊行された三冊の地誌や伝記などの単行本を除き、現在発見され確認されているほぼすべての文業を集成し、シュルリアリスム運動における詩人の役割と謎に包まれていた生涯を解き明かすものである。自作詩だけでも四十七篇が集まり、その劈頭頭には、今回見つかった北野中学在学中の講義をしている。
(「編者あとがき」より)
目次
[Ⅰ] 詩文集
- 画家の夢
- 二階より
- 祭礼小景(二篇)
- 帽子
- 断章
- 衣すれ
- めらんこりつく
- オリムピヤ・エロテイク
- CAPRICCIO
- マダム・ブランシユ
- Salutation
- 稀薄な窓
- 人間空間の歴史
- 突然なる頸
- 水あるひは理由なきマグネツシヤ
- 夢の装置
- 招待
- LA SOIE OU LA PETITE PYRAMIDE
- 悪い夢の後の怠惰な椅子の上の名誉
- BAISER OU TUER
- ACTRICE TYPIQUE
- SECRET DE L'ACTEUR
- DUO NOSTALGIQUE
- DUO DÉCORÉ
- UN ENNUI INFINI
- LE GESTE PERPÉTUEL
- FILS D'APOLLON
- APOLLON ?
- CONFESSION ?
- EST-CE MUSE ?
- LE CERVEAU ET LE SOIR MUSICAL
- LE TIROIR DU POÈTE
- OPÉRATION POÉTIQUE
- DÉPART DU POÈTE
- BAVARDAGE DU COQ
- 日本超現実派の運動に関する 銀行家カンガルウ氏よりの通信
- ──産毛をつけた日本の詩人諸君に贈る
- THÉATRE DANGEREUX
- わが生活レビユー (一)
- THÉATRE MERVEILLEUX
- POÈME DE POÈTE DE TROIS ANS
- 『恋の黄昏』の読後に
- 最近詩壇に望みたき事 (一)
- 『仮説の運動』へ反射する
- apparition
- LE PIÈGE DE LA POÉSIE
- 魔法書或は我が祖先の宇宙学
- 詩に対する態度
- 成立
- 襤褸
- 襤褸
- 襤褸
- 夏の通信
- 襤褸
- ポオル・エリユアール
[Ⅱ] 翻訳集
- DÉCOUVERTE DES PATTES DU SPHINX en 1926(ジヤン・コクトオ)
- J'RAI VEUX-TU(バンジヤマン・ペレエ)
- ポオル・エリュアル詩抄
- JOUEUR 賭博者 ルイ・アラゴンに
- UNIQUE 無二の
- A COTE 側に
- LESQUELS どちら
- PARFAIT 完全
- PETIT JUSTES 美しき正当等
- SECONDE NATURE 第二の自然
- PORTE OUVERTE 開かれた扉(ポオル・エリュアル)
- 非 主義超現実主義者達に与ふ
- (ブルトン+ペレ+アラゴン+エリュアル+ユニック)
- 農夫の夢想(ルイ・アラゴン)
- dada 宣言(トリスタン・ツアラ)
- 宇宙・孤独(ポオル・エリユアル)
- 今日風の格言(ポオル・エリユアル+バンジヤマン・ペレ)
- ポオル・エリュアール(ルネ・シヤアル)
- 詩論(ロオトレアモン)
- ボオドレエル論(フィリップ・スウポオ)
- ボオドレエルとその時代
- 美学者としてのボオドレエル
- 詩人としてのボオドレエル
- 憂欝(シヤルル・ボオドレエル)
- 詩六篇(ジゼエル・プラシノス)
- 妹と仔牛
- 溶解
- 葡萄
- 巨きな建物
- 敷物
- それは草である
- 映像(ポオル・エリユアル)
- 讃歌(ルイ・アラゴン)
- ポオル・エリュアール詩抄
- 耐へる
- 私は休息の可能を信じてゐた
- ルネ・マグリット
- 砕かれた橋
- おまへは起きる
[附録]
訳者の言葉(冨士原清一訳、ダンディ『ベートーヴェン』より)
冨士原清一のこと(高橋新吉)
冨士原清一に 地上のきみの守護天使より(瀧口修造)
冨士原清一年譜
底本および解題
編者あとがき