さすらひの森 松田解子

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 1940年9月、六藝社から刊行された松田解子(1905~2004)の長編小説。装幀は小堀稜威雄。書きおろし長篇小説 (新鋭作家叢書第2)。

 

 わかい心は、えて、翼をもとめて飛翔したがるものだけれど、この作の主人公も、それをもとめて大都會に出た。放浪の生活が、むかふやぶりな意慾にからんで、飽くこともなく繰展げられる途上の、青春の作用や思索に、私は殊さら興味を感じて書いた。若いがゆゑに夢が多く、現実にたいしては幼稚だけれど、精いつぱいに羽搏いて突きあたつてゆく、あの青春の態様は、いくら書いても書きたりないほどのものがあると思ふ。
 ともあれ、荒っぽくて、華やかで、身も心も新らしい力に溢れてゐる、あの季節、たとへうそ寒いさすらいの森の中にみたとしても、塒(ねぐら)も職場も熔墟のやうなものであつたのではなからうか。
(「序」より) 

 
目次

  • 五十錢銀貨との會話
  • 鏡のなかの朝鮮娘とその良人
  • 公休日きたれり
  • 心をどり心しづみ
  • 跳びこんだ場所
  • 姉さま意識
  • 口論
  • 心のみの戀
  • 悲しき懐疑
  • 小娘の意地
  • 地球の自轉に逆らつて
  • 日本一の部分品
  • 何のために流された血か
  • 過失
  • 嗚咽のなかの眞實
  • 生水のシャンパ


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