1940年6月、白水社から刊行された松田解子(1905~2004)の短編小説集。
永いあひだ創作の筆のすすまない時期を私は持つた。そして最近漸くまた書けだしたのである。世相への凝視、生活意慾の展開に沈默の時期は用ひられたのであつたが、書きだしてゐる今は、次の仕事への拍車にするためにも一本にする計畫をたてたのだった。
最初この本は、中篇程度のもの二、三でまとめる積りであつたが、最近の全貌を示すため、短篇も自分に気に入つてゐるものは集めることにした。中には改題したものも、内容にわたつて推敲をこころみたものもある。又、未發表作も加へた。ともあれ御批判を得たいとおもふ。
(「序」より)
目次
序
- アルト・ハイデルベルクの夜
- 囮
- 愚かしい饗宴
- 姉ごころ
- 聖育産院のクイン
- 岐れみち
- 火口の思索
- アパート點景
- 女優に似た顏
- 抛げられた花瓶
- 愛怨の宿
- 鎧はれた泡