三人姉妹 上林暁

 1957年9月、小壺天書房から刊行された上林暁(1902~1980)の短編小説集。『珍客名簿』(山田書店、1955)と同内容。

 

 本作品集は、山田静郎君が前にやってゐた出版社から出した「珍客名簿」の書名を変へたものである。山田君は捲土重来して小壷天書房を起すに当り、是非もう一度あの本を出してみたいと懇望に見えた。それには、気分を一新して進みたいので、書名も新しくしてもらへないかと申出があつた。私は、真摯な出版人である山田君に少しでも力を籍して上げることが出来れば幸ひだと思って、快くその申出に応ずることにした。書名は変つたが、収録作品に私の第十七創作集「珍客名簿」と全く同一であることをお断りしておく。
 前書には、「書店宛の手紙」と題する解説が附けてある。それを要約して言へば、この八篇の作品は、自分の家に見えた来訪者―その多くは珍客である来訪者の群像になつてゐる。これでも解るやうに、自分はよく来訪者のことを書く。一面から見れば、自分の文学は来訪者の文学と呼べるかも知れない。自分の受身な生活態度が文学にも現れるわけで、多少気にならないことはないが、これも文学の一趣向だと思ふことにしてゐる。来訪者のそれぞれが、なつかしい人や珍らしい人達であればあるほど、猶更である。なつかしい人や珍らしい人達は来尽してしまって、もう種切れになったのではないかと思つてゐると、またひよつくり訪ねて来るのが、いつものことである。さういふことのある度に書き溜まったのが、これらの作品である。これからもまだ殖えるかも知れない。
 そんなふうに書いて、自分の創作集としては、「一寸毛色の変ったもの」であると結んでゐる。今でもやはり、「一寸毛色の変った」創作集だと思つてゐる。
(「あとがき」より)

 

目次

  • 珍客名簿
  • 鉛筆の家
  • 扁平魚
  • 故旧
  • 恐怖
  • 三人姉妹
  • 女勧誘員
  • 薄命

あとがき


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