1969年1月、起点社から刊行された赤木健介(1907~1989)の第4詩集。装画はまつやま・ふみお。
私の詩集としては、『明日』(一九三五年、伊豆公夫名義)、「交響曲第九番』(一九四二年、赤木)『赤木健介叙事詩集』(一九四九年)があるので、本書『複眼』は第四詩集ということになる。
第三詩集と第四詩集のあいだが二十年近くも空白であるのは、一つには私自身の詩作にたいする不熱心――怠惰のせいであり、一つには詩集を出す費用がなかったからである。あとの点について言えば、詩集(歌集も同じことであるが)を出すということは、いわゆる詩壇ジャーナリズムに乗っている人は別として、たいへん金のかかることなのである。今どき二十万や三十万の金は、大したものでないと言えるかもしれないが、私にとっては不可能事であった。もっとも、この本はそんなにかかってはいないそれだけに、ごらんのとおり貧弱きわまる姿である。
(「あとがき」より)
目次
- 市場で 上板橋風景Ⅰ
- ある電柱 上板橋風景Ⅱ
- 駅前広場 上板橋風景Ⅲ
- 筑豊のこどもたち
- ぼくにそれができるか
- ぼくにできること
- ぼく、労働者と言えるだろうか
- メーデーがくる
- 五月のメモ
- 〔Ⅰ〕 タンポポの種子
- 〔Ⅱ〕 苗
- 〔Ⅲ〕 おかず
- ある日の同人会
- 通夜
- 十二月三十一日のビラ貼り
- 兵車行 (訳詩)
- 複眼
- 同人諸君
- 孤独な彼ら
- 一日はかくも豊かなのに
- 最終カンパを
- メーデーにも悲しみがある
- 渡せないだいじなもの
- 投票を待つ一時間
- 塩尻峠
- 山へ行くぼく
- 家がない
- 丸の内・銀座
- 早春
- 隣人よ、偉大な朝鮮国民よ
- 白楽天と私
あとがき