1957年4月、新潮社から刊行された長谷健(1904~1957)による北原白秋(1885~1942)の伝記小説。装幀は岡村夫二(1904~1976)。
前作「からたちの花」は白秋の多感な少年期を描きました。本書はその詩聖北原白秋の波瀾に富んだ青年期を経て最初の抒情詩集「邪宗門」上梓に至る苦悩煉獄の一時代に取材しております。白秋がその恋愛事件のため、姦通罪という忌まわしい名を負って、獄中で坤吟したころには、彼を知る友人の中にさえ破廉恥なこととして非難のつぶてを投げかけた者がいました。しかし、白秋は、今日も尚、しかく非難されなければならないだろうか、私は、この白秋の青春時代に鋭いメスをいれて、その真実を極めたいと思い、ここに小説「邪宗門」の一編を世に問うことにしたのです。(著者)
目次
- バッカス開眼
- 白秋復活
- 大御所の門
- 南蛮憧憬
- 夏の巡礼
- 失意の女
- 明星墜つ
- 化物会
- 空に真赤な
- 肉親相剋
- 奇遇
- 浅き浮名
- 黒枠事件
- ザンボアの味
- 最良の日
- 男の権利
- 媚薬の風
- 禍つ監獄
- 保釈出獄
- 槍ぶすま
- 三崎新居
- 城ヶ島の雨
- 天国と地獄
- 別離の歌