1957年4月、新潮社から刊行された長谷健(1904~1957)による北原白秋(1885~1942)の伝記的フィクション。装幀は装幀は野島青玆(1915~1971)。
私は、白秋が郷里柳川を去った年の十月、同じ柳川の地に生まれた。そして、白秋が青春を謳った同じ空気と水とに育った。
その私が、若き日の白秋を描こうと永い間念じてきたのは、ごく自然の帰趨だったといえよう。しかし、ここに描かれた小説は、白秋の伝奇小説ではない。白秋を取巻く周囲の人々、特に白秋が、「常に兄弟のやうに親しんだ友人の一人……」と誌している親友とをモデルにした、純然たる私の創作である。私自身の若き日の、精神史の一端ともみられるかもしれない。(著者)
目次
- 怖れ知るころ
- 大人の世界を覗く
- 命の洗濯日
- 春のめざめ
- 水天宮祭
- 螢合戰
- 野蠻人ども
- ぜに龜の如く
- 霖雨降り續く
- 菱の實
- 颱風一過
- 外目の里
- 靑春讃歌
- 古問屋の師走業
- 油屋炎上
- 薄月夜
- 暗い跫音
- 孤愁
- たんぽぽ
- 若鷲の巢立