1974年5月、宝文館出版から刊行された佐々木喜善の選集。編集は山田野理夫。装画は水木しげる。
私が佐々木喜善に就いて執筆したのは昭和二十九年で、長谷川伸の主宰する「大衆文芸」に「仙台風俗志」の点景として登場せしめたのである。佐々木喜善の人となりは明治四十年代、内閣文庫で柳田国男の部下だった常盤雄五郎から聞書していた。この度、「奥州のザシキワラシの話」(大正九年刊)と単行本未収録のザシキワラシに関する話、さらにオシラサマ関係の著作を併せて一本とし、「遠野のザシキワラシとオシラサマ」として編集、刊行し、次いで佐々木喜善の死後本山桂川氏に拠って編集された「農民俚譚」(昭和九年刊)に単行本未収録の子供遊戯に関わる単行本未収録のエッセイ、遠野地方の風習行事を併せて新たに編集し成ったのが、本書「佐々木喜善の昔話」である。本来、編集過程では「遠野のザシキワラシとオシラサマ」と本書を一冊にする考えでいたが、紙幅の都合上これを二冊としたことを申添える。
(「編集あとがき」より)
目次
岩手郡昔話
- 箕の輪曲げと山姥の話
- 牛方と山男の話
- 雪姫の話
- 山伏が崇る話
- 柳の精に見込まれた女の話
- 人柱に立った女の話
- 蛇ノ島弁天の由来
- 盛岡市鉈屋町の某寺にある地蔵の由来
- 手掛の松
- 彦石の話
- 義ケ坂の大蛇の話
和賀郡昔話
- 炭焼長者の話
- 瘤取爺の話
- 瓜子姫子の話
- 屁びり嫁の話
- 石になった蛇の話
- 和賀の二度栗話
- 河童から骨継の術を伝授された人の話
- 隠里に行った人の話
- 赤沢山の山女の話
胆沢郡昔話
- 蜂から智慧を借りて聟になった話
- 菎蒻が豆腐を見舞うた話
- 命の洗濯をした話
- 長い名をつけて失敗した話
- 鮫に呑まれた医者坊主の話
- 慾の濃い鷹が爪をぬいた話
- 日本一のカバネヤミの話
- 長頭をまわした話
- 馬鹿聟が歌を詠んだ話
鳥虫木石伝
- 安珍の別譚
- 黒岩川右衛門
- 化け石
- 五右衛門石石の怪異
- 乱獅子荒五郎
- 潟の主の老婆
- 盛岡名物ちゃぐちゃぐ馬子
- 鼬の怪
- 大滝の主
- 火柱を切った話
- 木ノ根本尊
- 弘法と水
- 東根太郎と八郎太郎
- 南僧坊
- 南昌山の青竜権現
- 笊淵
- 馬蹄石
- 葦毛淵
- 黄金の牛の口碑
- 五郎沼
- 白鬚の水
- 釜淵の主
- 椚林の大蛇
- 機織姫の窟
- 大日堂の怪石
- 山吹川
- 五郎沼から出た古碑
- 砂子塚
- 河童の子を生んだ女
- 山男の出た家
- 福の神は牛であった家
遠野手帖
- 不老長命の話
- 朱塗りの石
- 一片ばかりの智慧
- 千曳石の話(追補)
- 赤子塚(死女出産譚)
- 煙草が魔除となるという事
- 大岡裁判の話
- 地蔵雑話
- 遠野雑記
- 岩手県遠野町誕生習俗
- 岩手県地方の婚姻習俗
- 岩手県遠野地方の葬礼
- 陸中国遠野郷にての冬期に於ける年中行事の一例
- 陸中紫波地方の桃太郎花咲爺の話
縁女綺聞
- 縁女綺聞
解説 山下久男
佐々木喜善小伝 山田野理夫