2001年6月、至芸出版社から刊行された水谷きく子の第5歌集。
退職後、妹と暮すために神戸に移り住むことにしたのは、ほとんど衝動的に近かった。どうも私という人間はよく考えるということが出来ない性格なのかも知れない。そのかわり後悔することもあまりなかったのは天性の楽天家なのだろうか。
だからというわけではないが、今のところこの神戸の町がしごく気にいっている。たぶんここが終の住処となるのだろう。モデル料出さねばならぬ妹と二匹の犬がわたしを見ている
仕事を離れてからたしかに短歌の素材に苦労している。そのおかげでか一緒に暮すようになった妹が最近戦々恐々としている。何時短歌のモデルにされているか油断が出来ないのだ。二匹の犬のほうはよく分かっていないからまあいいけれど……。
生き甲斐ってなんだろう。いままで仕事に熱中してきたので紛れていたものを神戸に来て捜している。見つからないかもしれないけれど、私らしくのんびりと捜したい。
(「あとがき」より)
目次
・第一章
・第二章
- 坂の町
- 三時の天使
- 細き絹糸
- 青蔦
- 二人暮らし
- 海色の靴
・第三章
- 窓に鳴る風
- 銀の横文字
- 病み臥す
- 花
あとがき