季節 尾崎昭美詩集

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 1971年4月、思潮社から刊行された尾崎昭美(1933~)の第1詩集。著者は杉並区生まれ、刊行時の職業は愛知大学職員。

 

 尾崎さんと初めて会ったのは、昭和四十一年四月、尾崎さんが愛知大学に赴任してこられたときで、私はその二年まえからそこにいた。だから結果として言えば、私はこの東海の伊良湖岬に近い、潮っ風の強い都市で、彼を待伏せしていたことになる。私は京都からここに来ていて、彼は東京からここに来て、ここで出会ったのだから。旬日を出ずして、尾崎さんは、わが友尾崎となった。
 以来、私は彼の人柄に魅せられていったのだが、その彼は、時には常識人たちの(―だから私の)目をみはらせるような、危なげな興奮、いらだちを示すことがないこともなかった。だがこれは、つねに彼の内面の、極端な、といってよい傷つき易さ、純真さから来ていて、そうしたあと、彼はちょっぴり哀れっぽい寂しげな顔をして、悄気げた。
 巻頭の詩『生きてきた』で彼は、「少年は青年にならなかった」と歌っている。彼は自分の内面の傷つき易さを、苦々しく思っているのかも知れない。傷つき易さが嗅ぎわけてくる羞恥を、もてあましているのかも知れない。「少年の頭に血が溢れたそれは逆流し逆巻き…」。
 だが、この資質が彼の詩の根底になっていることは疑いない。また、彼の自然に対する愛情は、その人間愛と相俟って、まことにこまやかである。彼は、動物や鳥たちや野の草木が、自然の風景が、好きなのだ。朝、窓辺に餌をもらいに来る雀たちに話しかけ、夜ふけ、道ばたののら犬に話しかける。しゃがんでのら犬に話しかけている彼の姿は、暗闇のなかで、犬が尾崎に話しかけているのかとふと私は思った。『早春』は彼のこうした面を示す名吟であろう。
 彼は今度、結婚した、そしてその機会に詩集を編むという。読者とともにそれを喜ぶ。
(「跋/大槻鉄男」より) 

 


目次

はじめに
・日々に

  • 生きてきた
  • 夕映えの波
  • 夏の終り
  • 木場
  • 勝鬨橋
  • コオロギ
  • 長原の小池
  • 機関車
  • 陸橋
  • 冬を愛す
  • 夜の道
  • 高くなり低くなり
  • 電車が踊って
  • あるものがあるべきところに
  • ゴキブリ
  • イヌ

・季節

  • 青空と幻覚
  • 早春
  • 不眠の夜
  • 春の日は
  • 白昼夢
  • フォト
  • 片割月
  • 何も
  • 残骸
  • 日暮れ
  • 公園
  • カラスウリ
  • 一年
  • ブレックファースト

跋 大槻鉄男


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