1949年2月、草美社から刊行された坊城俊民(1917~1990)の長編小説。装幀は細木茂子。1994年8月、集英社から復刻された。
「末裔」の創作を志したのは、私の少年時代である。その頃知った輝かしい詩魂の持主は三島由紀夫だった。爾来十年間、彼とは詩を語った。さうして、詩以外のことは語らなかった。彼が瑰麗な跋文を寄せてくれたのは、かかる事情による。
私の作品を世に紹介しようと努力した一人に、大學時代に得た唯一の友人、谷本敏雄がゐる。この本と同時に、河出書房から彼の書き下し長篇三部作「暗峡」が出る筈である。然し彼の書いたものを私は讀んだことがなく、彼が如何なる人間か今もって判然とはしない。けれども「末裔」が出版されたのは、全然この不可思議な友人の力による。
(「あとがき」より)
目次
偽序 渡邊一夫
- 一 遠花火
- 二 鼻と一族
- 三 舞
- 四 落日
跋 三島由紀夫
あとがき