1994年9月、砂子屋書房から刊行された佃学(1938~1994)の第8詩集。装幀は正井彗とCINAMON(森岡真帆)。刊行時の住所は杉並区南荻窪。
数年前から腰痛で往生していたところ、伏兵に足を払われた感じで、昨年十一月とうとう入院する羽目になってしまった。入院したらこんどは手術をしなければ助からないということになった。病院というところは病気を治すよりももしかしたら余病を誘発するところかもしれないなどとついあらぬことを考えてしまう。何が何だかわからないうちに麻酔をかけられ、気がついたときは不如意なベッドの上に丸太のように投げ出されているのだった。この間私はまったく時間の感覚がなかったわけだから、大変な手術だったってね、などと看護婦さんにいわれても本人にはその自覚がまるでない。文字どおり悪夢のような一月余が狂い咲きの金木犀のように過ぎて年末になってやっと退院した。退院はしたものの普段のようにはいかない。意に添わぬ生活が間延びしたファルスのように不機嫌につづいている。
(「水没記――あとがきに代えて」より)
目次
1
- 夜が明けるまで
- 五月雨病前線
- 〈地獄坂〉メモ
- 齢五十男の唄
2
- 際限もなく
- 追善
- サンクチュアリ破産
- キツツキは……
3
- ネワァーン・ネウェイン洗脳塔
- 幻夏
- 妖春
- 田螺
水没記――あとがきに代えて
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