1970年8月、木犀書房から刊行された菊池正の詩集。装画は加藤喜夫、帯文は大木実。
二十代から今日までに書いた旅の詩を集めてみた。その多くは、一夜二夜泊りのゆきずりのものであったが、時には何月と逗留が長びき其処でのあけくれがすっかり身に添うたこともあった。しかしたずね行くさきは、故園のような安らぎを感ずる古い寺々や、茅屋根にペンペン草がゆれ、火の見櫓だけがひときわ高い名もない山村とか、かたむいた庇煤けた障子を見ていく旧道沿いの駅路ばかりだったと、あらためて自ら驚いているのである。そのいずれもが、私の生きのすがたそのまま、ひっそりと果てのない孤愁を求めての行路であったといっていい。作品はおおよそ年代順にまとめ配列した。そこに、つたない己のせいいっぱいの移ろいを、せめてうかが得ればと思うのである。
(「あとがき」)
目次
・帰郷
・山居
・鳥影
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