1962年10月、昭森社から刊行された谺雄二(1932~2014)の第1詩集。著者は東京都生まれ、刊行時の住所は国立療養所栗生楽泉園。
この「鬼の顔」は、過去一〇年間、私がほそぼそとかきつづって来たものの中から、記録的な作品を中心に編んだ小詩集である。
私はこれまで、ハンセン氏病(らい)患者としての私の、または私達の、いわば“墓碑“を刻む気持で詩をかいて来た。もちろん詩というものは、けっしてそんなものであってはならない筈だが、しかし私の場合、それはまさに詩をかく上での信念であり、また覚悟であった。同時に、こうしてわが”墓碑”を刻む作業を続けて来たことが、今日まで私を生かして来たことになる。じっさい、よくまあこれまで生きて来られたものだ。この詩集をまとめた後の、そして満三〇才を迎えたばかりの、これが私の実感である。
現在、私達ハンセン氏病患者の現実と意識は、この詩集のそれとは、およそちがう。ハンセン氏病治癒の可能性とその現実化によって、病室の窓は希望にかがやき、更に≪医療の充実≫≪療養生活の向上、そしていわゆる≪社会復帰をめざすたたかいが、強く展開されている。したがって私達のこの新たなたたかいが、必ず人民的勝利をかちとるためにも、詩集「鬼の顔」は、やはり”墓碑"でなければならない、と私は云っておきたい。
(「あとがき」より)
目次
序詩〈井手則雄〉
- コラプスの旅
- 猿と神様とぼく
- 鬼の祭
- 夜(I)
- 自画像よ
- この薄明り
- 病室
- 残暑
- 夜(II)
- 空
- 雪の太郎
- 姉と弟
- 鬼の恋
- 枯原にて
- 十五夜の月に
- 泪と眸
- なかま
- 秋
- 黄蝶よ
- 朝明け
- 鉈をとぐ
- 夢がかえってくる
- 病むならば
NDLで検索
Amazonで検索
日本の古本屋で検索
ヤフオクで検索