1969年10月、大地堂書店から刊行された竹下彦一の句集。
俳句を始めてからもう二十三、四年になるだろう。洋燈が好きなので、俳号を洋燈亭とつけて一寸こう云う号をつけているのはいないだろうと、威張っていたら友人の平山明洋君が、松江へ行ったら小泉八雲の邸が、あんたと一緒の名がついていますと云われて、がっかりしたが今更変える事も出来ないので、俳号にはこれを使っている。
ところがいくら洋燈亭と云っても認めて呉れない処がある。それは八幡城太郎君の青芝グループで、洋燈亭と云っても竹下彦一にされて了うので、これも仕様がない事だと思っている。
我流で書をかき初めてからこれも廿五年位になる。一日に一時間ずつ自分の好きな字をかいて来たが、これにもなんとか雅号が欲しいと思うが、適当な雅号が見つからない。山と云う字の上に何にか欲しいと思うが、何を載せても面白くないので、これも洋燈亭とかく事にしている。
字というものもむつかしいものだと思う、余り堅くなってもかえってかけなくなるし、いい字は書けない。自分が気にいる字がかけるかしらと、そんな事を思うばかりである。
もう十年生きていて、字をかいて居られたらもう少しいい字が書けるものをと思う。年を取ると一年と云わず、一日を大切に仕度いと思うようになるものである。
これから十年仮名をみっちり勉強仕度いと思っている。
俳句にはひたむきな情熱を傾けて来た。廿三ヶ年も一ヶ月も休まないで句会を続けて来て一度も休んだ事がないのだから、この真似は他人には出来ない芸当だと思っている。
ここに収めた句は最近の作から、自分の好きな何を選んでみた。
(「あとがき」より)