1998年3月、編集工房ノアから刊行された塔和子(1929~2013)の第15詩集。第29回高見順賞受賞作品。カバーは西脇洋子。
人は多くの記憶をもっていて、それは思い出として浮かび上がったり、忘却の中へ沈んでいったり致しますが、忘却の中へ沈んでゆくことさえ、それは在ったということを消しようのない、証しとなるのです。
この詩群は、そんな多くの記憶をふまえて書きましたもので、日々の現実とかさなり、どれもみな日常のなりわいのなかに見られるものですが、 そうは言ってもこの中の作品はみな、私だけの思いであり、私だけの記憶ですので、誰も代わって書くことのできないものです。そういう意味では、やはり書きとめておくべきことであると思うのです。
(「後記」より)
目次
- ただ立って
- いちじく
- 釣り糸
- 愁
- 虫
- 青い炎のように
- 秋
- 言葉の核
- 生身
- 座像
- バラの木。
- 食卓
- さわらないで
- 地球で
- 水
- 水仙
- 見る
- ここは
- 倉
- 眠り
- 無
- 蕾
- 装う
- 女
- 記憶の川で
- 作ったものの意のままに
- 私はいま
- 花
- 創造
- 不出考
- 球根
- 五月
- 邪悪な鬼
- 春の大地は
- 快や美に
- 記憶
- 飢渇
- 崖の上
- 骨
- 餓鬼
- 触手
後記