不眠者の祈り 石出和詩集

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 1960年9月、未開出版社から刊行された石出和の第2詩集。

 

石出君 村野四郎

 石出君という人は,こういう人だ。いつも言葉少なく,いつも目立たない。低い場所に立って,人より重いものを背負うことを,自分の運命のように思いこんでいる。
 そうした忍従と謙虚のモラルは,彼の詩創造の根底にもよこたわっていて,彼が事物をうけとるために差しだされた手は,とても慎重をきわめて,リルケ的でさえある。
 彼の叫びは,いつも外にむかって発せられず,ひくいオクターブで内にこもり,そこに死と生の胎児をそだてている。この,ふしぎに隠密な充実が、彼の詩の重要なリアリティーとなっている。「水のない魚」とか「勲章」といった作品は,私たちに,新しい詩の希望をあたえてくれるものだろうと思う。

  

 この詩集は「少年盛装」(一九五二)以後の、一九五三年から一九六〇年夏までに書いた詩の中で自分の気にいったものだけをまとめた、私の第二詩集である。
 この七年間、美しい生活(という表現がゆるされるなら)を願って過ごしてきたが、実際は夢と現実の両刃のナイフに魂を切りきざまれ、私なりの不眠の時代だった。そして、どうやら保ち続けてきた詩魂に再び刺激を与え、新しい道標に向かって進むための転機とする意味から「不眠者の祈り」の出版は、私にとってぜひ必要だった。
 なお、この詩集の詩の配列は詩作年月の順を追わず、私の好むまま、四項に大別したが、参考までに、詩作年月を巻末に添えてみた。
 出版にさいし村野四郎先生から御批評を、また詩友、川口昌男氏に多大のお骨折りをいただき深く感謝しています。
(「あとがき」より)


目次

序詩

  • 春秋
  •  春秋
  •  不安
  •  誕生日
  •  一匹の蝶が冬の陽の中で
  •  文明の中で
  •  花の季節のために
  •  熱暑の街
  •  庭
  •  傷
  •  アデノイド
  •  背
  •  仮眠の室
  •  道草
  •  現在から未来へ
  • 田園の変貌
  •  田園の変貌
  •  昆虫採集
  •  おれの神様
  •  朝
  •  夜のシーツ
  • ボスの祝日
  •  ボスの祝日
  •  勳章
  •  逃亡
  •  水のない魚
  • 詩劇 ハゲタカは生きていた
  •  Ⅰ
  •  Ⅱ
  •  Ⅲ


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